東急コミュニティーがオフィスビル改修で「Matterport Pro3」を採用 野原グループとともに現場をBIMモデル化:BIM
東急建設は、オフィスビル改修工事に、3D撮影カメラ「Matterport Pro3」を採用し、点群データからBIMモデルを生成して、改修工事の2D図面の作成に関わる問題を解消した。
野原グループ2023年7月26日、マンション管理やビル/施設のマネジメントなどを行う総合不動産管理会社の東急コミュニティーが施工するオフィスビル改修工事で、米Matterport(マーターポート)の3D撮影カメラ「Matterport Pro3」とクラウドによる自動生成の利点を生かし、改修工事に必要な2D図面作成を効率化したと明らかにした。
点群データとBIMモデルで、改修工事での図面作成の問題克服へ
現在、BIMは新築物件の設計プロセスでの活用が主流で、竣工後の建物(既存建物)の維持管理プロセスでの活用事例はそれほど進んでいない。また、建物のライフサイクルは、維持管理の期間が最長でありながら、改修工事では図面がデータ化されておらず、図面と現況が異なるといった難点がある。
そうした中で、東急コミュニティーでは、数年前からFM(ファシリティマネジメント)業務でのBIMやデジタルツインの活用を検討していた。しかし、既存の建物をBIMモデル化するには、そもそも図面がデータ化されていないことや図面そのものが無いこと、図面と現況が異なることなどの諸課題があった。そこで、一度BIMモデルを作ってしまえば、各工程で矛盾のない2DCAD図面を素早く作成できるため、マーターポートカメラを用いて、既存建物をスキャニングし、自動生成される点群データからBIMモデルを作成する野原グループのScan to BIMを試すに至った。
野原グループは、2020年8月からMatterportの日本国内販売リセラーを担い、建設/不動産業界にプロセス変革をもたらす一つのツールとして、デジタルツイン(3D/VR空間モデル)の活用支援に注力している。
Scan to BIMは、既存建物のBIMモデル化のみならず、改修工事の現場調査、図面作成といった維持管理プロセスの変革を支援する野原グループのサービス。マーターポートカメラを用い、既存建物を3D測量して、自動生成される点群データからBIMモデルを作成し、2D図面の生成へと展開する。
今回のプロジェクトでは、東急コミュニティーがMatterport Pro3を購入し、その付帯サービスとして野原グループの点群データをBIMモデル化するサービスScan to BIMを用いた。Scan to BIMの「簡単デジタルツイン生成」「簡単点群データ取得」「簡単BIMモデル生成」の利点を生かし、既存建物の改修工事で図面作成のプロセス変革に、野原グループによるBIMモデリングなどのバックアップも受けて挑戦した。
現場での3D測量は、地下1階/地上5階建て延べ床面積約2500平方メートルを対象に、屋上や外構を含めて7時間ほどで完了したという。取得した点群データをもとにBIMモデルを作成し、複数の2D図面(平面図や展開図など)も生成して改修工事に役立てた。
東急コミュニティーの担当者は、「BIMモデルから出力してもらった2DCAD図面は、若干の修正が必要なものの、十分な品質だった。従来の手法とのコスト、時間の比較はこれから詳細な検証が必要だが、点群データを渡ししてからBIMモデルと図面の納品までの時間は、思っていたよりも早く、大幅な省力化につながるのではないかと期待している」とコメント。
今後は、BIMモデルの特徴を生かし、省エネをはじめとしたさまざまなシミュレーションや積算、プレゼンなどへの応用も視野に入れている。担当者は、「以前はスーパーゼネコンや大学の研究室のような一部の機関でしか使えなかった技術が、野原グループの力も借りて可能になったことで、将来はステークホルダー全体が利益を享受できる形で実装していきたい」と話す。
野原グループは、今回の事例を皮切りに、不動産管理の企業とともに、維持管理を含む建物のライフサイクル全体におけるデジタルツイン(3D/VR空間モデル)活用とBIM普及による業務効率化に、一層注力していく。
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