M&F tecnicaがBIMモデリング会社として国内2社目となるISO 19650に基づく「BIM BSI Kitemark」認証取得:BIM
M&F tecnicaは、ISO19650に基づく「BIM BSI Kitemark」認証を取得した。BIMモデリングを請け負う受託会社としてのBIMのISO認証取得は、国内2例目となる。
M&F tecnicaは2023年7月13日、英国規格協会BSIの日本法人BSIグループジャパンから2023年6月16日付でISO 19650-1とISO 19650-2に基づく「BIM BSI Kitemark(カイトマーク)」の認証を取得したと公表した。BIM Kitemark認証は、国内10件目の事例となり、モデル制作の受託組織としては2件目。
認証取得にあたり、受託組織としてBIM情報マネジメントの在り方を検討
M&F tecnicaは1999年の創業以来、施工図作成を請負い、2016年にはBIMの奥深さやモデル活用への可能性を意識し、「建設デジタル、マジで、やる。」を経営方針として掲げ、建設業界でのBIM活用に取り組んでいる。「より手軽に使える施工BIMの支援ツールを提供したい」との思いから2022年には、Revitアドオンツール「MFTools」の提供を開始。同年8月には、建設DXに取り組む野原グループと業務提携し、「BuildApp(ビルドアップ)」を共同開発し、建設の全工程を通じたBIMなどのデータ活用による生産性向上、サプライチェーン変革、環境負荷軽減、脱炭素化といった業界課題の解決に向け、建築デジタル化を後押ししている。
今回のM&F tecnicaによるBIM BSI Kitemarkの認証は、受託組織として受注したBIMプロジェクトを対象に、タスク計画の「TIDP(Task Information Delivery Plan)」をはじめとする文書整備やBIM 360を活用した共通データ環境の「CDE(Common Data Environment)」整備、3Dモデル作成プロセス、顧客満足や協働作業により、効率的な施工図モデル作成業務の促進を証明したものとなる。
2023年7月12日に執り行われた認証授与式。写真左から、M&F tecnica 代表取締役社長 守屋正規氏、M&F tecnica 伊藤貴光氏、BSIグループジャパン 代表取締役社長 漆原将樹氏 提供:M&F tecnica
M&F tecnicaによると、認証取得を決めた目的について、「建築DXの旗印の下、建築のプロセスをデジタル化(改革)が求められているが、それはBIMによる建築プロセスの改革を意味する。すなわち、BIMデータを使って設計から施工、維持管理までのプロセス全体をつなぎ、BIMデータを利活用する仕組みを業界全体で作り上げていかなければなないことになる。BIMがこのような建築プロセスのデジタル化の基盤として機能するには、BIMデータ(情報)を最適にマネジメントする必要がある。当社は受託組織としてBIMモデリングを行う業務を行っており、BIM情報マネジメントの国際規格ISO 19650-1,2に準拠してモデリング業務を遂行しなければならないと考えている。そのために今回、規格を学び、認証取得にむけて取り組んだ」と説明する。
認証取得にあたり、工夫や苦労した点に関しては、「ISO 19650-1,2の認証に先立ち、研修を受けることで、BIMの情報マネジメントの在り方、重要性を各社員が認識することができた。その上で、具体的なプロジェクトにISO 19650に準拠したBIM情報マネジメント規格を当てはめ、EIR(Employer Information Requirements:発注者情報要件)、BEP(BIM Execution Plan:BIM実行計画)の具体化(明文化)、CDEの構築、情報コンテナの整備(階層、版管理、命名規則の整備など)を行うことで、BIMモデルの管理や共有といったBIM情報マネジメントの在り方の指針を得ることにつながった」とコメント。
その過程で、「現状のBIMのプロセスはISO 19650-1,2に完全に準拠した形で情報マネジメントが行われているわけではなく、さらには、受託組織としてISO 19650-1,2に準拠したモデルデータの取り扱いを行っている前例も少なく、解釈も手探り状態だった」と振り返る。
今後の展望は、「BIMを中心とした建設産業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を成し遂げるには、建設プロセス全体を一斉に変えていかなければならず、そのためには全関係者が足並みをそろえて、最初の一歩を踏み出すことが肝要だと考えている※参照:BUILT連載:建設産業構造の大転換と現場BIM〜脇役たちからの挑戦状〜(1)。BIMモデリングのアウトソーシー(受託組織)である当社も、建設業界のDXのために一歩前に進まなければならない。国際規格に準拠したBIM情報マネジメントに対応するべく研鑽(けんさん)し、元請受託組織であるゼネコンのBIM化、ひいては建設業界のDXに貢献していきたい」と話す。
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