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設計はデジタルリレーの時代へ、日建設計の病院設計にみる意匠・構造・設備のBIM連携Archi Future 2022(3/3 ページ)

日建設計は、BIMの建物情報「BI(ビルディングインフォメーション)」に着目し、大学病院の設計案件で、意匠・構造・設備のBIM連携=デジタルリレーを試みた。

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クリティカルな箇所を早期発見、大きな手戻りを回避

 総合病院の設計では、意匠と構造の情報は、AutodeskのDynamoを利用して連携している。意匠・構造・設備のBIMモデルがリンクし、納まり検討でクリティカルなポイントの早期発見など、先を見通した問題を発見することが可能になった。作業が進んでしまってからの問題頻発が回避され、結果として手戻りの防止につながる。

 さらに、意匠モデルをもとにした躯体負荷計算の自動化も実現している。浅川氏は、意匠BIMと内装や外装仕上げのBI情報を活用した例を紹介した。

 実現に向け、意匠部門に対し、設備部門が要望するルールで情報の入力を依頼した。当然、意匠部門からは「なぜ俺たちがやるの?」という反応があったという。対して、浅川氏は「結果はこうなるんだ」というメリットを丁寧に説明し、協力を仰いだと明かす。

 最終的に、3000室の負荷計算は、1カ月はかかると予想していたが、ものの数日で完了した。ただ、意匠モデルとの調整に3週間ほどかかっているので、全体の時間は変わらないが、チャレンジという意味では多大な成果を得た。

 他にも、情報の連携は、高さ規制や景観条例といった行政対応、さらには確認申請時に設計の意図を伝えるときにも有効となる。

BIMによるデジタルリレーの課題

 浅川氏は、BIM連携は失敗の繰り返しであり、「何度も諦めようかと思った」と振り返る。しかし、やり遂げたことで見えてきたこれからの目標とすべき課題もあると強調する。意匠BIMの変更を設備部門に伝えるステップがその一例だ。

 意匠BIMから技術計算などを行う建築部門に与えられる情報は、CSVやExcelのファイルだ。このため、意匠BIMの変更で部屋追加や削除対応などに伴う設備情報への対応は、設計者の判断によるアナログ作業のままで、デジタルリレーのボトルネックとなっている。

デジタルリレーに残る“アナログ作業”
デジタルリレーに残る“アナログ作業”

 浅川氏は、この部分に関しては現在も試行錯誤が続いているが、うまくいく方法があれば教えて欲しいほどだと打ち明ける。意匠BIMからの情報によって設備部門の技術計算が行われるが、その計算結果が、後のスタート地点になるからだ。こうした課題について、浅川氏はソフトメーカーへ期待を寄せる。

 BIMのデジタルリレーは、設計のフェーズの後も続く。設計の後には施工があり、完成後にもファシリティマネジメントなどでも利用される。多くの人から「私たちもBIをやるぞ」という声が挙がれば、ソフトウェアメーカーが応じ、設計の質が向上するような環境整備が進むことが期待できる。

 浅川氏は、「BIMの将来が明るく楽しくなる時代が来るようなことを、会場にいる方々とともに踏み出していきたい」と語り、講演を終えた。

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