米設計事務所が試みるBIMで進化するモジュール建築、サプライチェーンまで包括する新たな建築生産システム:Archi Future 2022(1/3 ページ)
「Assembly OSM」は、米ニューヨークを拠点に斬新なコンピュテーショナルデザインの建築設計を行う設計事務所「SHoP Architects」の子会社。新しいテクノロジーを建設の手法に活用し、親会社のSHoP Architectsが持つテクノロジーや人材などを活用しながら、建設業界の慣例や手法から離れた新しい建築生産システムの構築に挑戦している。
米設計事務所「Assembly OSM」のデジタル・デリバリー担当ディレクター ニール・メレディス(Neil Meredith)氏は、「Archi Future 2022」(会期:2022年10月28日、TFTホール)で、「BIMで進化するユニット化・モジュール化―サスティナブルで高品質な建築生産・高層住宅への適用―」と題して録画講演を行った。
講演では、建設業と製造業を類比し、製造業のプロセスを建築に応用する試みを具体例とともに紹介。メレディス氏の講演に際し、大成建設 設計本部 企画推進室 室長 猪里孝司氏が要点を補足説明した。
建物の提供方法までを含む建設プロセスを製造業のモノづくりに転換
メレディス氏はまず、「非効率的な建設のままでは、昨今の住宅需要に追い付けず、いまのモジュール建築では高層住宅に通用しない。現在のテクノロジーと建設技術は、高品質な住宅やマンションを作るのに必要な条件を満たしていない」と問題点を指摘した。
十分に満たせない理由として、メレディス氏は“建築業の生産性が伸びていない”とし、特にデジタル化では、建設業は他産業の小売業、鉱業、農業より遅れていると述べた。
この状況において、Assembly OSMは建築製造、設計、エンジニアリング、サプライチェーンまでで、従来の建築様式の先を行く手法を選択した。そこで手本にしたのが、製造業におけるモノ作りのソリューションだ。
Assembly OSMでは、建物の提供方法までを含む建設業における各種作業を高度な製造業のメソッドに近づけている。航空機メーカーのボーイングやエアバスは、機体全体を自ら製造しない。飛行機の各部をサブアセンブリに分解し、それぞれを製造するサプライヤーと連携するサプライチェーンを展開している。Assembly OSMは、この手法を建設業に採り入れている。
ユニット化された建築部材を現場に搬入して組み立てるモジュール建築は、ボリュームモジュラー構造を用い、小さなボリュームの積み重ねで大きな建物を作る。このため、メレディス氏は「モジュラー建築の中で、どこでソーシングするか、どのサプライヤーと連携するかが重要になる。1つのプロジェクトで機能すれば良いのではなく、より広いエリアで、大規模に年間で複数のプロジェクトを進め、より高品質の建物を大量に作ることを目標としたい」と語る。
逆に、現在のモジュラー建築に沿って建築モデルを再構築することはやりたくないという。「建設活動を屋内に移すだけ、アセンブリをユニット化するだけなら、サプライヤーとの連携や諸地域からの情報集約、分散型の製造プロセスを十分に活用できない」。
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