劇団「四季」と清水建設、“竣工BIM”のヴァーチャル劇場空間でセット収まりや客席視認性を検証:BIM
清水建設は演劇興行会社の四季とともに、竣工BIMをベースにヴァーチャル劇場空間を構築し、セットの収まりや客席の視認性を検証するシミュレーションシステムの有効性を検証する。
清水建設はこのほど、劇場などで行う公演の事業性を評価するシミュレーションシステムを開発し、劇団四季を運営する演劇興行会社・四季の協力を得て、その有効性の検証に着手した。
演目の実現性(セットの収まり)の確認と、客席からの視認性をBIMで評価
検証にあたっては、システムのベースに据えている竣工BIMで、四季が上演する演目のシーンを精緻に再現したヴァーチャル劇場空間を構築。ヴァーチャル劇場空間では、事業性を評価し、評価結果とリアルな実演空間での評価とを両社共同で照合していく。
事業性の評価とは、舞台空間では演目の実現性(セットの収まり)の確認と、客席空間では視認性による販売席のグレード設定の2つが主な対象となる。興行主は、新たな演目に取り組む際など、必要に応じてその事業性の評価を行うが、舞台空間、客席空間のいずれの評価とも2次元の平面図と断面図の上で行う地道な作業で、膨大な手間と時間を要しているのが実情だ。
清水建設は、設計者が製作するBIMデータを建物の運用段階に至るまで一貫活用するプラットフォーム「Shimz One BIM」を展開している。運用段階で活用する竣工BIMについては、出来上がった建物の3次元形状が納められているため、そのデータを活用した新たなビジネス展開を模索していた。そうした中、竣工BIMを活用することで興行主による事業性評価を代替できると考え、劇場工事の発注者でもある四季とともに、シミュレーションシステムの有効性を検証することとなった。
中期デジタル戦略の核となるプラットフォームの1つ「Shimz One BIM」。高いデータ互換性を備えるRevitを中心に置き、設計・施工案件は、清水建設の設計者が作成する設計BIMを施工BIMから竣工BIMまで一貫したデータ連動を実現 出典:清水建設プレスリリース
システムによる事業性の評価手順は、まず、竣工BIMデータをカスタマイズし、舞台形状や座席の位置などを精緻に再現したバーチャルな劇場空間を構築。続いて、演目の複数のシーンについて、舞台装置や大道具、小道具、俳優の立ち位置などを3次元でモデル化し、バーチャル空間に取り込む。
事業性の評価では、演目の実現性はモデル化したシーンをバーチャルな舞台上に重ねることで検証し、客席空間の視認性は、各座席に着席した観客の視線で舞台上の任意の位置に設ける複数の視対象物を眺めて可視/不可視を検証する。各座席の視認率は、色で表現し、緑色は全ての対象物が可視できることを示し、赤色に近づくほど視認性が悪くなる。
所要時間は、いずれも数十秒程度で完了する。また、バーチャルな劇場空間は客席からの視認性に限らず、音響の聞こえ方、照明の明るさなども評価できるので、新築する劇場の計画検討にも対応する。
バーチャル空間での客席からの視認性検証。舞台のシーンごとの任意の位置に設けた複数の視対象物の可視/不可視の確認結果。舞台上の視対象物を円で示し、その中の数値は全座席からの視認率(視認できる客席/全客席数) 出典:清水建設プレスリリース
バーチャル空間での客席からの視認性検証。舞台の上部右側に設けた視対象物の可視/不可視の確認結果。視対象物が見えない(不可視)の座席が朱色に色分け表示されている。客席から伸びる朱色のラインは可視域で、白いラインは不可視域。後部座席からは2階の座席が視界を遮り、視対象物が見えないことを表示している。舞台上の視対象物を円で示し、その中の数値は全座席からの視認率(視認できる客席/全客席数) 出典:清水建設プレスリリース
清水建設では今後、システムの有効性の検証を経て、本システムによるコンサルティング業務を展開するとともに、四季はシミュレーションシステムで事業性の評価業務の合理化を図っていく。
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