スマートビルのアーキテクチャ設計でSociety 5.0実現へ DADCがBIMやビルOSの活用で構想する未来像:Archi Future 2022(4/4 ページ)
スマートビルを起点に、サービスやプラットフォームの連携を都市レベル、社会レベルへと拡張し、人間中心の社会=Society 5.0の実現を目指す、情報処理推進機構(IPA)傘下の「デジタルアーキテクチャ・デザインセンター」。スマートビルのアーキテクチャ設計が向き合う課題と、その未来像とはどのようなものか。
「参照情報の不足/未確立」「不十分なマネタイズ投資対効果」「技術人材の不足」
最後に中村氏は、現状の課題とそれに対するDADCの基本対応方針について報告した。まず課題について。ビジョンを実現するアーキテクチャを検討するためにDADCは、ゼネコンやメーカー、ビルオーナー、ビル管理会社、投資会社、学術分野の有識者など、多様のステークホルダー計49団体へのヒアリングと、建設業界を交えたワークショップでの内容を分析し、現状の課題を整理した。その結果、「参照情報の不足/未確立」「不十分な投資対効果」「技術人材の不足」の3点が浮き彫りになったという。
これらの課題に対してDCDAが定めた基本対応方針は、「業界標準の策定」「普及促進制度の設計運用」「ベストプラクティス」。それらを通じて、最終的な将来成果物として、「ガイドラインの策定」「スマートビル認証/表彰制度の制定」「発注作業の負担を軽減する発注テンプレート作成〜発行まで」を目指す。
現在、明らかになった課題と基本対応方針に従って、スマートビル将来ビジョン検討会に紐(ひも)づく各スタディーグループのもと、多様なステークホルダーを交えながら、課題解決の議論を進めている。
検討会のうち、アーキテクチャスタディーグループ(上図左)では、スマートビルを取り巻く全体のアーキテクチャの検討と、ビジョンユースケースの詳細化を担う。標準化スタディーグループ(上図右)では、標準化を担う組織の検討、ガイドライン発行に向けた活動など、標準化につながる準備を担当している。
2022年度内にはアーキテクチュアを含むガイドライン初版を策定し、2023年度からは実証と研究開発の事業を開始する。また2023年度から2024年度にかけては、認証/表彰制度の検討を始める。「2025年の大阪万博でのモデルケース実証を目指し、それ以降に国内外で横展開を進めたい」との方針を力強く語り、中村氏は講演を締め括った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 電子ブックレット(BUILT):【座談会2.0】コロナ禍を経てビルシステムのセキュリティ意識はどう変わった?
ウェブサイトに掲載した記事を印刷しても読みやすいPDF形式の「電子ブックレット」にまとめました。無料のBUILT読者会員に登録することで、ダウンロードすることができます。今回のブックレットは、2019年にBUILT主催で開催した「ビルシステムにおけるサイバーセキュリティ座談会」の参加者を再び招集し、コロナ禍による環境変化などについて意見を交わした座談会2.0の前後編を再編してお届けします。 - BAS:ソフトバンクの「WorkOffice+」と竹中工務店の「ビルコミプラス」が連携、オフィス環境を可視化
ソフトバンクの「WorkOffice+」と竹中工務店の「ビルコミプラス」が連携し、専用アプリで温湿度などのオフィス環境を可視化するのに加え、入居者からの専用アプリでのリクエストを受けてビル管理者がオフィス環境を快適にできるようになる。 - 2022年BUILT年間記事ランキング:BIMやドローンなど建設ICTの動向に大きな進展があった1年、2022年「BUILT」記事ランキング
2022年にBUILTで公開された閲覧ランキングTop10の記事を紹介するとともに、1年間の“建設×テクノロジー”のトレンドも振り返ります。 - BAS:SBテクノロジーが竹中工務店ビルの新オフィスビルに、BAS向け“サイバーセキュリティ対策サービス”を導入
SBテクノロジーは、オフィスビルのサイバーセキュリティ対策サービスを竹中工務店の新オフィスビル「竹中セントラルビル サウス」に導入した。SBテクノロジーのサービスは、不正侵入やマルウェア対策も行い、スマートビル普及に向けたセキュリティ支援を行う。 - リノベ:東京都江東区で既存のオフィスビルを「成長するスマートビル」に改修、竹中工務店
竹中工務店と建物管理を行う竹中工務店グループのアサヒファシリティズは、東京都江東区新砂1丁目で開発を進めていたオフィスビル「竹中セントラルビル サウス」を開業した。両社は、竹中セントラルビル サウスを「成長し進化するスマートビル」と位置付け、関連する技術の開発と実践を継続的に展開し、オフィスビルストック再生のモデルケースとして提案していく。 - スマートビル:スマートビルで必要な複数のアプリを管理できるプラットフォームを開発、大林組
大林組は、国内外の複数企業とのオープンイノベーションで、スマートビルプラットフォーム「WELCS place」を開発した。今後はグループ会社である大林新星和不動産が所有するオフィスビル「oak港南品川」に導入し、利用範囲を拡大しつつ、将来は、オフィスビルだけでなくスマートシティー、工場、学校、病院、商業施設、ホテルといった用途の建物についても幅広く提案する。 - 電子ブックレット(BUILT):大手町ビル大改修の全貌とスマートビルを実現する警備ロボの実証
ウェブサイトに掲載した記事を印刷しても読みやすいPDF形式の「電子ブックレット」にまとめました。無料のBUILT読者会員に登録することで、ダウンロードすることができます。今回のブックレットは、三菱地所が東京都千代田区の「大手町ビル」で実施した大改修計画と、その先のスマートビルを実現する警備ロボットの実証実験のまとめです。