全社一丸で“西松DXビジョン”を目指す西松建設に聞く、600TBものデータ共有術とは?:クラウド(3/3 ページ)
西松建設は、クラウドストレージにBoxを採用し、全社一丸で進める“西松DXビジョン”のデータ基盤と位置付けている。これまで散在していた膨大な建設プロジェクトに関わるデータをBoxに集約することで、管理の負荷が低減し、社内だけでなく協力会社や工事関係者との情報共有、さらには場所を選ばない柔軟な働き方も実現した。
Box内に集約された構造化データと非構造化データをどう活用していくか?
西松建設では、DX実現に向けたBox活用の可能性を検証している。堀氏は「構造化データと非構造化データをそのまま一元的に保存するデータレイクとしては、Boxが十分活用できる」と強調する。属性情報をデータベースで出力できるBIMのような“構造化データ”と、その他の構造化(データベース化)されていないメール、PDF、図面、写真、Word文書、2次元CADデータなど“非構造化データ”をともに利活用する仕組みに関しては、まだ方向性を探っている段階にある。ゆくゆくはデータレイクとしての検索効率向上、写真データのAI分析によるメタデータへの情報自動付与、出来高検収明細表をRPAで請求データに登録など、データから新たな価値を生み出すことも見込める。
西松建設では現在、基幹システムの見直しに着手。堀氏は、「財務諸表や会計書類の証憑(しょうひょう)も含め、各システムに溜めるのではなく、全てBoxに集約したい」と語る。営業の業務でも、Salesforceの添付ファイルをBoxで管理しており、営業の契約書が会計システムでも参照できる。こうしたデータの一元管理で、分断していたデータの連携が可能になり、より高度な利活用が実現する。
現在、請求書では紙ベースの西松建設だが、電子帳簿保存法への対応も急務で、Boxの利用を検討している。また、現場入退場の管理でも、Boxの活用で利便性が高まる可能性がある。Boxにデータを集約することで、現場に協力会社のどういったスタッフが何人いるのかが把握できるため、工種別の人員手配やスケジュール調整もしやすくなるだろう。
Boxをデータ共有基盤とすることで、西松DXビジョンで目指す「現場」「ワークスタイル」「ビジネス」の3つの空間で、建設業務の最適化や働き方の変革だけでなく、高度なデータ連携による建設プロジェクトでの付加価値が生み出されることも期待される。
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