大林組が次世代の地下道路構想「ダイバーストリート」を実物大モックアップで検証:スマートシティー
大林組は、地下空間を構築する次世代の道路構想「ダイバーストリート」を実物大モックアップで、鋼矢板の本設利用の施工性や支持力特性の評価、工期短縮などの性能を検証した。
大林組は2023年3月3日、東京都清瀬市の大林組技術研究所内にある実証フィールドで、地下空間を活用する次世代道路構想「ダイバーストリート」の実物大モックアップを構築し、施工性や支持力特性、水平変位特性および工期短縮などを確認したと発表した。
ダイバーストリートは、道路の下に地下空間を構築して有効活用することで、搬送ロボットを走行させた物流システムの高度化、無電柱化、共同溝などの効率的なインフラ配置に活用できる他、豪雨時の雨水貯留といったBCP対策も可能になる。また、高い機能を有する路面機能により、自動運転の路車間通信や走行中給電なども実現し、次世代モビリティとの融合にも寄与すると期待されている。
打設枚数の低減や鋼矢板の引き抜き不要で、全体工期が約18%短縮
ダイバーストリートは、地下空間を構築する際に、従来の工法(PCaボックスカルバート)で土留め壁として使われていた仮設鋼矢板を支持構造物に利用する。
鋼矢板の引き抜き工事と側壁の躯体工事が不要で、工場で製作するプレキャスト床版のみを現地に運搬し、設置することで、コスト削減や工期短縮、掘削エリアの縮小につながる。
全体の施工性は、打設した鋼矢板とボルト接合した鋼板の上にレベル調整板と、クッション性の高い型枠材のソールスポンジを設置することで、最大3センチ生じていた鋼矢板同士の天端高さのズレを吸収し、プレキャスト床版を精度良く設置できる。また、ソールスポンジに囲まれたスペースに無収縮モルタルを充てんすることで、プレキャスト床版と鋼板が短時間で一体化する。
実証実験では、鋼矢板の支持力確保と沈下抑制対策の有効性を検証した。実証フィールドの深部は硬質地盤だったため、オーガによる先行掘削機能を搭載した圧入機械のクラッシュパイラーを用いて先行掘りをした後に鋼矢板を建て込んだ。
鋼矢板を支持構造物として本設利用するため、セメントベントナイトなどの固化材を充てんする根固め注入をして、支持力確保と沈下抑制対策を行い、車両重量約20トンのダンプトラックが走行しても鋼矢板の沈下量を0.1ミリ以内に抑えた。
また、実証フィールドの浅部は、軟弱地盤だったため、掘削すると鋼矢板が内側に転倒する危険性があったが、掘削する前に高圧噴射攪拌工法で地盤改良体を造成した。その結果、掘削後に鋼矢板頭部の水平変位を2ミリに抑制した。
今回構築したダイバーストリートのモックアップと、同規模の地下空間を従来工法(PCaボックスカルバート)で構築した場合の施工日数を比較した結果、ダイバーストリートで施工した場合は、幅の広い鋼矢板を使用することで、打設枚数が低減し、鋼矢板の引き抜き工事や側壁の構築工事が不要となり、全体工期が約18%短縮されると証明された。
今後は、モックアップを経過観察し、地下空間の利用アイデアの検討をはじめ、街や道路の進化に合わせてアップデートできる路面の研究開発を進めていくという。
現場への適用は、ダイバーストリートの具体的な施工地の選定を進め、地盤条件に応じた施工方法や求められる地下空間の用途に応じた設計方法も開発し、将来のスマートシティーを含め、都市のインフラ基盤構築に貢献していくとしている。
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