VR技術で現場作業員の安全意識向上へ、視覚・聴覚・触覚・嗅覚で労災を体感する安全教育:メンテナンス・レジリエンス OSAKA 2022
建設現場で発生する労働災害は、いまだに発生している。特に注意が必要なのはベテラン作業員のちょっとした不注意で発生する事故だ。仕事に慣れているがために、安全講習の内容が我が事のように感じにくく、伝え方を工夫しなくてはならない。
三徳コーポレーションは、「メンテナンス・レジリエンス OSAKA 2022」(会期:2022年12月7〜9日、インテックス大阪)で、VR技術を活用した安全教育サービスをPRした。事故状況をリアルに再現し、視覚や聴覚、触覚、嗅覚を刺激して、体感的な講習が実現する。現場作業員の安全意識向上に役立つと、企業からの関心が高まっている。
座学だけでは伝わりづらい危機意識を高めるために必要なこと
これまで現場作業員への安全教育は、座学が中心だった。災害事例のケーススタディーを知ることで、気を付けるべき点を学べるが、体感的に伝わらなかった。特にベテランの建設労働者は作業に慣れているので、緊張感を持って自分のこととして受け止められていない。そうした油断は重大事故につながるため、労働災害を徹底的に防止するためには新たな教育方法が求められている。
三徳コーポレーションのVR技術を活用した安全教育「RiMM 感受性向上 VR」はこうしたニーズに応えるサービス。多様な労働災害の状況を再現したCGによる体感データを自社で作成し、体験として分かりやすく伝えている。
ブースで説明にあたっていた担当者は、「安全教育は新人の方が真剣に受け止めてもらえる傾向がある。しかし、現場に慣れてきたと感じてきたときのちょっとした不注意が最も危険。当社のVR講習では、そうした方々に危機意識を持ってもらうためにあらゆる工夫を凝らしている」と話す。
体感的な刺激で事故の怖さを身に染み込ませる
RiMM 感受性向上 VRの特徴は視覚・聴覚・触覚・嗅覚を刺激し、労働災害の恐怖を体感的に伝えられる点にある。360度VRゴーグルで視覚的な印象を与えることはもちろん、触覚を再現するグローブやスーツ、落下の衝撃などを伝える低床動揺装置、匂い物質などを用いて、事故発生時のあらゆる感覚を再現し、身に迫る事故の衝撃を作業員に伝えられる。
例えば、転落事故を体感できる講習では、高所で作業する人物の視点で事故の発生原因を学ぶ。自らの操作であえて危険な行動をするように動き、落下の映像と連動する形で低床動揺装置が起動して、体が傾く感覚や風圧などを体に伝える。高所からの転落事故に対し、心理的に「怖い」「こうなりたくない」といった強い印象が感覚として残る。
担当者は「サービスは事故の感覚を体に残すことに重きを置いている。ただ、トラウマになっては逆効果になってしまうため、あくまでも印象に残すだけにとどめ、個人に合わせて怖さや感度の調整もできる」と説明する。
簡単に講習のセッティングができ、企業からの採用事例も増加
簡単に講習の準備ができる点も、評価されるポイントとなっている。ゴーグルやグローブ、ソフトを制御できるPCがあればすぐに実演が可能なため、15分あればセッティングが完了する。低床動揺装置も台車が付属し、工具レスで組み立てられるので手間が掛からない。こうしたさまざまな利点が評価され、導入実績のある企業は33業種400社を超えたとのことだ。安全教育は継続実行することで、より身に付くため、体感的に実感できるサービスはリピート率も高く、現場作業の危険を未然に防ぐことに役立てられている。
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