BuildAppを核に内装業界DXを目指す、野原HDの”施工BIM戦略”:第7回 ジャパンビルド−建築の先端技術展−(2/2 ページ)
BIMで建設プロセスを一元的なプラットフォームで一気通貫につなぎ、既存の建設プロセス変革を目指す、建材商社の野原ホールディングス。「第2回 建設DX展」では現在、特に注力している「BuildApp内装」と「BuildApp建具」をデモを交えて紹介した。
BIMから工場生産までシームレスにつなぎ、鋼製建具製作のボトルネックを解消
もう1つのBuildApp建具は、建具BIMと工場生産を連動させ、業務の効率化を図るサービスだ。
従来の鋼製建具制作では、建具表作成、見積もり、製作図設計・承認、製造CAD入力、工場生産というように製造プロセスが何段階も分かれ、発注から納期までに長い期間を要した。特に承認された製作図をもとに加工に必要な展開図(CAD図)を描く、いわゆる「バラ図拾い」には専門技術者の熟練の技(わざ)が欠かせないが、近年は専門技術者の高齢化が進み、人材確保が難しく、それが原因で納期が大幅に遅れるという事態も発生している。
BuildApp建具は、BIMデータを活用することでプロセスの多くを自動化し、建具製作プロセスにおけるボトルネック解消を狙う。建築BIMモデルから建具製作に必要な情報を抜き出し、自動で見積書や製作図を作成。製作図は3Dで閲覧できるため確認しやすい。そもそもBIMデータから製作図を作成するため、図面の不整合も基本的には発生しないため、製図承認の手間が大幅に削減される見込みだ。
さらに、国内の約8割の鋼製ドア(SD)製造工場に導入されているといわれる「TB-CAD」の開発メーカーであるシンテックと業務提携し、BIMデータからバラ図を自動作成する技術を開発。熟練した専門技術者不足の課題にも応える。
全体を通じて、鋼製建具の製作納期が約5カ月短縮できる計画だ。担当者は「“バラ図拾い”ができる熟練工不足だけでなく、製造工場数も減少傾向にある。制作過程の合理化で作業量を減らし、工場不足の課題にも対応する」と意気込みを語った。
野原ホールディングスは、同社の100%出資会社で内外装工事などを手掛ける野原産業エンジニアリング、中堅ゼネコンの東亜建設工業と3社共同で、国土交通省が実施する「令和4年度 BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業」に応募し、2022年7月に「鋼製建具生産サプライチェーンにおける生産性向上のためのBIM活用方法の検証」のテーマで「パートナー事業者型」として採択されている。現在、2023年3月を期限に、BuildApp建具を用いたスチールドアなどの鋼製建具の見積、製作図、工場生産までのプロセスをBIMデータでつなぐ仕組みの構築や効果検証を行っている。
サービス販売開始に向けて、実証が続く、BuildApp内装とBuildApp建具。野原ホールディングスは、両サービスともに「あと1年をめどに実証を続け、2024年度には販売開始を予定しており、次の1年が勝負の年になる」との展望を示した。
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