古河電気工業が道路インフラの維持管理を効率化、3つのアプローチで道路付属物点検のDXを支援:メンテナンス・レジリエンス OSAKA 2022(2/2 ページ)
道路インフラの維持管理で、自治体などの道路管理者は現状で多大な課題を抱えている。管理しなければならない路線は膨大にあるため、道路標識や照明、カーブミラーなどの道路付属物までは、点検の手が回らずに細やかな維持管理ができていない。こうした問題を解消する道路点検のDXを支援するツールが登場している。
道路付属物調査の手間を減らす「みちてんクルーズ」と「みちてんアシスト」
ドライブレコーダーで道路環境の動画を蓄積していけば、データの差異を見比べることで分かりやすく経年劣化の状況を評価できるようになる。しかし、やみくもに動画撮影しているだけでは、必要なデータを見つけ出すのに手間が掛かってしまう。
その点、みちてんクルーズは、路面走行のデータと台帳情報をもとに、RPA(Robotic Process Automation)で道路付属物付近の動画だけを抽出し、台帳に付属物リストとして蓄積する。動画は地図上の位置情報とともに保存するため、専用のビュワーソフトウェアで点検したい場所や時期を指定して効率的に劣化状況の診断が可能になる。例えば、現地での詳細点検をする前に、本当に目視点検が必要なエリアだけをスクリーニングすれば、調査員の作業時間が大幅に削減する。他にも、過去データとの比較で、劣化の進行度合いを確認したり、複数の方向にドライブレコーダーを搭載すれば、さまざまな角度から付属物の部位ごとに調べたりすることも実現する。
現地の目視点検でも、一回の巡視で多くの道路付属物の点検が必要となる。点検対象を探したり、個々の診断結果を記録したりするために費やす労力も甚大だ。みちてんアシストは、そうした悩みを解消するツールとして現場目線の支援を提供している。
みちてんアシストをインストールしたタブレットのカメラを点検エリア周辺にかざせば、AR機能で点検対象物を通知してくれる。対象物までの距離を画面上に表示するので慣れない調査員であっても迅速な点検が可能となる。撮影した写真や点検結果は、GNSS受信機で取得した位置情報をタブレットとBluetoothで接続して付与しているため、自動で画像と対象物との記録とが紐(ひも)づき、面倒な手入力を省けるため、事務作業の省力化に役立つ。
古河電気工業の担当者は、「自治体への導入事例が増え、少しずつ認知が広がってきている。さまざまな現場の声を拾い上げ、現場目線のサービスを提供していきたい」と語り、今後の展開にも意欲を見せた。
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