電動キックボードのワイヤレス充電ポートシステムを開発、大林組と古河電工:製品動向
大林組と古河電気工業は電動キックボードのワイヤレス充電ポートシステムを開発した。今回の開発は電動マイクロモビリティのシェアリングサービスを提供するLuupの協力を得て進めている。
大林組と古河電気工業(古河電工)は共同で、電動キックボードのワイヤレス充電ポートシステムを開発し、実証試験を開始したことを2021年12月7日に発表した。
2025年度に製品化を予定
近年、国内では、脱炭素への社会的関心の高まりを受けて、一部の企業が都市部を中心に電動アシスト自転車や電動キックボードのシェアリングサービスを展開している。こういった企業では、利用者の満足度を高めるために、電動アシスト自転車と電動キックボードを、場所や時間を問わずに使える環境づくりと手間をかけずに充電できる手法の開発を推進している。
しかし、充電に関しては、充電池の大容量化や人の巡回による交換で充電池の高価格化や人件費の増加を招いていた。そこで、大林組と古河電工は、電動キックボードのワイヤレス充電ポートシステムを開発した。
両社が開発した電動キックボードのワイヤレス充電ポートシステムは、古河電工の樹脂製ケーブルトラフ「グリーントラフ※1」に収納した送電装置、受電機を搭載した電動キックボード、電源ボックスで構成されており、キックボードが送電装置の上に駐機することで自動的に充電が開始される。さらに、充電中に金属異物を加熱しにくい電界結合方式※2を採用しており安全性も高い。
※1 グリーントラフ:再生プラスチックを主原料とした環境に優しい樹脂製ケーブルトラフであり、コンクリートトラフに比べて軽量で耐久性・耐衝撃性・現場加工性に優れるという特徴を持ち、太陽光発電所や鉄道線路脇でケーブル収納に多くの実績がある。なお、「グリーントラフ」は日本における古河電気工業の登録商標
※2 電界結合方式:2枚の電極板に交流を印加して発生した電界を介して電力伝送を行う方式。磁界による導体内での渦電流の発生に伴う発熱が起こらないことから、金属異物を加熱しにくいという特徴があり、また電極をアルミ板などで構成できるため軽量化が可能であり、加工性にも優れている
利用するメリットは、人が巡回して行っていた充電池の交換だけでなく、回収した電池の充電といった作業が削減されるため、充電管理にかかる運用コストを低減する点。加えて、日々の電池交換が不要となり、交換用の予備電池を減らせる。また、大容量化していた電池搭載量を低減可能なため、機体コストをカットするとともに、軽量化により燃費(使用電力)が向上する。
今後、両社は、東京都清瀬市の大林組技術研究所で、新システムの充電と走行の実証実験を2022年3月まで行う他、開発したシステムの実証を重ね、利用者と運営者にとって最適な充電システムやインフラの研究と改善を進め、2025年度に製品化する見込みだ。
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