「衛星SAR」で標高をモニタリングする技術を開発、NECとオリエンタルコンサルタンツ:ICT
NECは、オリエンタルコンサルタンツとともに、画像生成技術「衛星SAR」で取得したデータから標高をモニタリングする技術を開発した。今後は、降雨後の土砂移動量を予測する技術の開発に向けて、引き続き連携を強化していく。
NECは、オリエンタルコンサルタンツとともに、画像生成技術「衛星SAR」で取得したデータから標高をモニタリングする技術を開発したことを2022年11月1日に発表した。
安価でタイムリーに土砂移動量などをモニタリング可能
国内では近年、気候変動の影響などで、全国各地で水災害が激甚化および頻発化しており、国土交通省や流域自治体では「流域治水」の取り組みを加速させている。流域治水の取り組みでは、流域の状況を把握するための監視と観測(航空LP測量※1/縦横断測量)を定期的に行っているが、流域が広範にわたりコストと労力の問題が生じ、十分なデータの取得に至っていない。
※1 航空LP測量:航空機に搭載したレーザスキャナーから地上にレーザ光を照射し、地上から反射するレーザ光との時間差により得られる地上までの距離とGPS測量機、IMU(慣性計測装置)から得られる航空機の位置情報により、地上の標高や地形の形状を精密に調べる測量。
一方、流域治水で的確な治水マネジメントを行うためには、大雨などの事象発生後に土砂移動や生産源を把握することが重要で、タイムリーなデータの取得が求められる。
そこで、NECとオリエンタルコンサルタンツは、これまで経時変位(時系列差分干渉解析)として利用されてきた衛星SARの技術を発展させ、この技術と標高のデータを組み合わせて体積を算出する解析手法を確立。その後、この解析手法を活用して、安価でタイムリーに土砂移動量などをモニタリングする技術を開発した。
新たなモニタリング技術は、衛星SARで撮像したデータを解析して対象エリアの標高を面的に算出する他、土砂移動後における撮像データの解析を行い、面的な高さを導き出す。この2つの面的高さデータを差分解析することで、土砂移動量の算出が行える。
さらに、今回の技術を活用することで、流域内における土砂の経時変化を体積として把握することが可能となり、定量的な土砂量や生産土砂量の変化を見える化し、さまざまな対策の立案を実現する。
一例を挙げると、新たなモニタリング技術を用いて、土砂堆積によって生じる河積阻害や土砂堆積速度を推定し、砂防堰堤の開発で必要な除石計画の立案などが行え、これまで定量的な予測・計画が難しかった事象の定量化を達成できる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 衛星データ解析による都市課題可視化サービスに新機能追加
DATAFLUCTは、衛星データ解析を活用した都市課題可視化サービス「DATAFLUT aline.」β版のリリースを発表した。グリッド単位で、年代ごとのスプロール進行度を可視化・特定する機能を搭載。 - ICT建機にも活用される準天頂衛星システム「みちびき」開発の道のり
内閣府は、ICT建機などでも活用が見込める準天頂衛星「みちびき」の機能や効果について認知拡大を推進している。 - 人工衛星で工事地表を測量、フレキシブルに広範囲を計測可能に
奥村組とパスコは、シールドトンネル工事での地表面の変位測量に、人工衛星を適用したと発表した。従来の測量機器を使用した方法と同等の精度で測量できることを確認したという。 - 衛星「だいち2号」のデータを自動解析する“JAXA”のインフラ予防保全
衛星を使って河川堤防や港湾などのインフラ変位をモニタリングするJAXAのツールが商業利用の段階に一歩前進した。2019年8月から事業化できる民間企業を募集しており、このほど中日本航空とSynspectiveが選ばれ、商用利用に向けて大きく前進した。