人工衛星で工事地表を測量、フレキシブルに広範囲を計測可能に:情報化施工
奥村組とパスコは、シールドトンネル工事での地表面の変位測量に、人工衛星を適用したと発表した。従来の測量機器を使用した方法と同等の精度で測量できることを確認したという。
奥村組とパスコは2017年9月、シールドトンネル工事における地表面変位測量に、地上にマイクロ波を照射して地表面の状態を観測する合成開口レーダー(SAR)衛星を適用したと発表。従来の測量機器を使用した方法と同等の精度で、広範囲を測量できることを実証したという。
シールドトンネル工事では、地表面への影響を最小限に抑えながら安全に掘り進めるため、シールド機直上やその周辺の地表面変位を監視する必要がある。これまでは複数の観測点を設け、水準儀やGNSS測量器を使って測量し、変位経過を監視していた。しかし、こうした方法では観測点付近に測量機器や受信機を設置する必要があり、交通量が多い道路や立ち入りに制限のある私有地では測量が難しく、多くの時間と労力がかかっていた。
今回、地表面の変位測量に活用したSAR衛星は、地球を周回しながら、地上に向け自らマイクロ波を照射し、その反射波を受信することによって対象物の観測を行うことができる。事前に人工構造物などの安定して計測可能なポイントを特定し、同点に変位が生じた場合、地球を周回するSAR衛星が受信する反射波に位相差生じる。この値を解析することで、変位量を算出する。
奥村組とパスコは、この解析で得られる地表面の変位量データを視覚的に捉えるため、変位データの大きさごとに色分けしたメッシュ図や、コンター図を表示するシステムを独自に開発した。メッシュ図やコンター図に2次元の地図や航空写真、シールド機の位置などを重ね合わせて表示させられるという。
両社はこのシステムを、京都市上下水道局発注の「新川第6排水区新川6号幹線(雨水)(その1)公共下水道工事」に導入。掘進開始から完了までの約1年2カ月の間、計画線の全長を対象に、幅100mにわたり計30回以上の頻度でSAR衛星による計測を行った。掘進ルートの周辺は交通量が多く歩道も狭い住宅密集地だったが、立ち入りが困難な私有地などの制限を受けることなく、多数の観測点で広範囲を面的に計測できたという。今後はシールド工事以外にも幅広く活用することも視野に、改良を重ねていく方針だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- IoTで土木工事の全てを“見える化”、生産性が15%向上
フジタは建設現場の建設機械、人、測量に関する情報をクラウドに集約し、全工程を可視化する工程管理システムを開発。実際の土木工事現場に導入し、15%の生産性向上を実現した。 - 道路の老朽化を素早く判断、パナソニックが非破壊手法を実用へ
パナソニックは高速道路の鋼橋などインフラの老朽化を、赤外線カメラで診断できる技術を開発中だ。このほど阪神高速道路とこの技術を活用して鋼橋の寿命診断を行う研究契約を締結した。インフラの老朽化が進むで高まっている検査手法の効率化ニーズに向け、早期の実用化を目指す考え。 - 大林組がトンネル工事にAI活用、専門家の知見を学習
大林組は山岳トンネル工事での切羽の評価に、AI技術の1つであるディープラーニング(深層学習)の活用を進めている。一部の項目については、9割近い精度で地質学の専門家と同等の評価が行えているという。 - コンクリ表面の品質、タブレットでピタリと分かる
日本国土開発と科学情報システムズは「コンクリート表層品質評価システム」を開発した。表面気泡の状況を自動的に判定して施工品質の改善につなげる。ディープラーニング技術を用いることで、従来の画像処理では到達できなかった精度に達した。