NECが映像から複数人物の多様な建設作業を認識する技術を開発、大和ハウスと共同で技術検証:現場管理
NECは、現場のカメラ映像をもとに、複数人物の多種多様な作業内容を認識する技術を開発した。新技術は、これまで困難とされていた多数の人が行き交う混雑した環境下でも、作業内容を同時並行で安定的に認識する。
NECは2022年11月28日、建設現場に設置したカメラ映像から、複数人物のそれぞれ異なる多種多様な作業内容をリアルタイムで高精度に認識する技術を開発し、大和ハウス工業と共同で建設現場の実証実験を通して、有効性を確認したと発表した。
人の姿勢や道具、物体の種別などで、複数の作業を同時に認識
近年、建設業界では、人口減少や高齢化による労働力不足に加え、2024年に適用される時間外労働の上限規制により、働き方改革と生産性向上が急務とされている。しかし、建設現場のように多くの人が出入りし、状況が日々変化する環境下では、現場全体の状況把握や人員リソースの最適配置など、効率的な現場管理や現場改善が課題となっている一方で、そのための各現場の作業内容や作業時間のデータ化は難しいとされていた。
また、一般的な行動解析技術にも問題があり、人物や物体の関係性を解析するが、人物や物体の視覚的特徴のみが用いられ、認識できる行動や状況が限定されていた。
今回、NECが開発した新技術では、人物や物体の視覚的特徴に加え、作業内容を認識するうえで重要となる人物の姿勢、使用している道具や重機などの物体種別、人物や物体の位置情報、人物の周辺環境の視覚的特徴など、表現形式の異なる多様な特徴の関係性を統合的に解析。「掘削」「転圧」「整地」「コンクリートならし」「コンクリート流し込み」「台車運搬」「鉄筋組み」といった現場作業を同時並行で認識することが可能になる。
また、深層学習で適応的に重み付けして解析することで、人の重なりなどで、一部の特徴が検知されない場合でも他の特徴で補完する。仮に、大人数が密集していても、位置情報を重視して人物と物体の間の関係性を正確に捉える。これにより、建設現場のような多数の人物が動き回る混雑した環境でも、安定して作業内容を認識することが実現する。
大和ハウス工業と共同で実施した技術検証は、2022年3〜5月に戸建て住宅の建設現場で実施した。その結果、「転圧」「根切・埋戻」「コンクリート打設」「鉄筋組み」など、複数の作業内容を正確に認識し、現場作業者による各作業の作業時間を10%以内の誤差で推定した。
NECは今後、建設に加えて、製造・物流・小売などの現場作業でも技術検証を進め、2023年度の実用化を目指す。
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