墜落制止用器具フック不使用者を自動検知するAIモデルを構築・検証、奥村組ら:AI
奥村組と日立ソリューションズは、画像認識AI(人工知能)技術を活用した墜落制止用器具(安全帯)のフック不使用者を自動検知するAIモデルを構築した。
奥村組と日立ソリューションズは、2021年7月1日〜2022年1月31日の期間に、画像認識AI(人工知能)技術を活用した墜落制止用器具(安全帯)のフック不使用者を自動検知するAIモデルを構築・検証し、十分な性能を持つことを確認したことを2022年4月21日に発表した。
事前に複数現場で収集した6000件以上の画像を学習させたAI
厚生労働省が発表した資料によれば、2020年に発生した国内の労働災害では、墜落や転落による死亡事故が191件と最も多く、死傷者数は、2万997人に上っている。加えて、厚生労働省は、労働安全衛生法の改正を行い、2019年2月1日から、高所作業で使用する安全帯の規格はフルハーネス型を原則とし、名称を「墜落制止用器具」に改めるなど、安全基準を厳格化した。
こういった状況を踏まえて、建設会社などには、現場における墜落転落災害の撲滅に向けて、効果的な安全対策を行うことが求められている。そこで、奥村組と日立ソリューションズは、画像認識AI技術を活用して、カメラ映像からフック不使用者を自動検知するAIモデルを構築した。
今回のAIモデルは、事前に複数現場で収集した6000件以上の画像を学習させたもので、建設現場のカメラ映像から親綱支柱や親綱、フックを検出し、フックが親綱にかかっていない不使用状態を自動判定(特許出願中)する。
奥村組は、埼玉県にある鉄骨建方中の建設現場で、AIモデルの検証を行い、カメラと対象となる作業員の距離が15メートル以内で、人や物が重なっていないという条件下であれば、フック不使用者を90%以上の精度で正しく認識できること※1を確認した。
※1 フック不使用者を90%以上の精度で正しく認識できること:画像認識AIが危険な状態と判定した中で、実際に作業員がフックを親綱にかけていない精度。撮影環境により、精度が異なる場合がある。
なお、検証では、映像データの提供を奥村組が、AIモデルの構築と精度検証を日立ソリューションズがそれぞれ担当し、AI判定手法の検討や課題抽出と対応策の検討、フック不使用者の判定フローの検討は両社で行った。
今後、両社は、2022年夏にAIモデルの共同開発をさらに推進し、AIモデルに、フックの不使用状態が一定時間続いた場合にメールと警報機器で管理者や現場の作業員に通知する機能を付加してシステム※2化し、2023年から販売を開始する。これによって、管理者は、その場にいない時でも遠隔で作業員の不安全行動を検知し、適切に管理することが可能となる見込みだ。
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