大林組が橋梁リニューアル統合管理システムを開発、各工程に3次元モデルを活用可能:ICT
大林組は、高速道路橋の大規模更新プロジェクトで、既設構造物の出来形測量や新設構造物の設計、プレキャスト部材(床版と壁高欄)の製作、現場施工、維持管理のデータを一元的に活用するクラウド型統合管理システム「OBRIS」を開発した。
大林組は、高速道路橋の大規模更新プロジェクトで、既設構造物の出来形測量や新設構造物の設計、プレキャスト部材(床版と壁高欄)の製作、現場施工、維持管理のデータを一元的に活用することで、各フェーズでの業務を効率化するクラウド型統合管理システム「OBRIS(Obayashi Bridge Renewal Integrated System、オブリス)」を開発したことを2022年11月21日に発表した。
「OBRIS-D」や「OBRIS-P」といった4つのシステムで構成
国内では、高速道路橋の約7割が建設から30年を経過しており、リニューアル工事が各地で進められている状況だ。リニューアル工事の増加に対応するためには、いかに安全と品質を確保しながら、手戻りなく早期に施工を実施していくことが求められている。
そこで、大林組はOBRISを開発した。OBRISは、プレキャスト部材の製作、現場での施工、竣工後の維持管理に、設計段階で作成した3次元モデルを利用することで、データの受け渡しや作成過程での人為的ミスを排除し、システム上での連携により、業務を大幅に省力化・効率化する。
加えて、「OBRIS-D(Design、設計統合システム)」「OBRIS-P(Production、製作統合システム)」「OBRIS-C(Construction、施工統合システム)「OBRIS-M(Maintenance、維持管理統合システム)」といった4つのシステムで構成され、設計や施工に必要なデータを連携することで、各フェーズにおける手作業の自動化を後押しし、デジタルツインを用いた施工シミュレーションの導入なども達成して、生産性の向上だけでなく不具合の未然防止や高品質の確保に役立つ。
OBRIS-Dでは、3次元レーザースキャナーやUAVにより測量して点群データを取得し、基準となる既設橋梁(きょうりょう)出来形の3次元モデルを高精度に作成する。この3次元モデルをベースに、道路線形データによる新設床版や壁高欄の割付け、既設床版のカット割付けを自動で作れる。
なお、従来、手動で行っていた割付図の作成が割付条件を入力するだけで即座に完成するため、検討に要していた作業時間を約10分の1程度に短縮する他、3次元モデルに各部材を設置し、部材同士における干渉の有無などを確認して、設計の不具合を回避する。
OBRIS-Pでは、作成した割付図などの設計データと部材の形状寸法を自動計算した新設床版や壁高欄の製作図(3次元モデル)を作成し、それを工場に引き継ぐことでプレキャスト部材として製作できる。製作工程では、品質データをOBRISに記録するとともに、製作状況をカメラで監視・指導することで高品質を確保する。
製作したプレキャスト部材に関しては、3次元レーザースキャナーで形状・寸法を計測し、設計時の3次元モデルと比較することで誤差による合否判定を行う。さらに、計測データを反映した各部材を3次元モデル上で設置し、施工シミュレーションを実施することにより、設置座標を取得するとともに、製作した新設床版と既存構造物の干渉などを事前に回避可能。
ちなみに、床版取り換え工事でBIM/CIMにより事前のバーチャル施工が行え、床版取り換え工事でデジタルツイン技術を使うのは国内初の取り組みだという。
OBRIS-Cでは、施工シミュレーションで得た各部材の設置座標データをベースに、現場で各部材の配置が行える。具体的には、実際に設けた座標はOBRISに記録され、設置誤差を反映した修正シミュレーションを実施することで、施工にフィードバックする。
また、床版設置における四隅の目標設置座標を高精度に検討できるため、現場での設置に掛かるタイムロスの削減や施工箇所全体の線形確保もクラウド上で行える。
OBRIS-Mでは、測量から施工までで使用した一連の全データをクラウド上に格納するだけでなく、施工完了後の保守・点検時には、必要なデータ(設計・品質管理・出来形寸法・施工日など)をクラウド上から速やかに得られる。
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