大林組らが勾配がある橋梁に適用できるUHPFRCを開発、小型の施工機械で使用可能:施工
大林組や大林道路、宇部興産は共同で、道路橋リニューアル工事における交通規制期間の短縮と耐久性の向上を目指し、UHPFRC◆「スティフクリート」を開発した。スティフクリートは西日本高速道路発注のRC床版補強工事で採用されている。
大林組や大林道路、宇部興産は共同で、道路橋リニューアル工事における交通規制期間の短縮と耐久性の向上を目的にUHPFRC※1「スティフクリート」を開発したことを2021年9月21日に発表した。
※1 UHPFRC:Ultra-High Performance Fiber Reinforced cement-based Compositesの略称で、超高性能繊維補強セメント系複合材料の一般名称であり、圧縮強度が1平方ミリ当たり100ニュートン以上の超高強度材料。さらに、非常に緻密な構造を有するため、透気性・透水性が極めて小さく耐久性にも優れている
施工後3時間で圧縮強度は1平方ミリ当たり24ニュートン以上
昨今、国内では、社会インフラの老朽化が社会問題となっており、国内の道路橋でも、約半数が今後10年間で建設から50年を経過することから、リニューアルが急務となっている。橋梁(きょうりょう)のRC床版が老朽化した場合には、通常、SFRC※2を用いて補強するが、SFRC補強では床版が増厚になるため、周囲の舗装面と高さが合わなくなる。
※2 SFRC:Steel Fiber Reinforced Concreteの略称で、鋼繊維補強コンクリート。コンクリートに鋼繊維を混合することで強度や耐荷性・疲労耐久性を向上させた材料
加えて、重量増加により下部工の補強も必要となる他、「打ち継ぎ目からの雨水浸透」や「既設コンクリート界面とのはく離」による早期劣化も招いていた。そして、常温硬化型UFC「スリムクリート※3」を含む一般的なUHPFRCは、高強度で、流動性や自己充てん性にも優れるため薄層での補強が可能だが、硬化までの時間が長く、橋面に勾配がある橋梁での施工には適していなかった。
※3 スリムクリート:高温蒸気養生を必要とせず、現場でのシート養生だけで、圧縮強度が1平方ミリ当たり180ニュートン以上で、引張強度が1平方ミリ当たり8.8ニュートン以上を確保できるモルタル材料
上記の問題を解消するために、大林組は、スティフクリートを開発した。スリムクリートは、超高強度材料の採用により薄層での補強に対応し、長期耐久性にも優れる。加えて、「早期強度の発現性能」と「早期硬化時間の制御性能」を付与することで、早期の交通規制解除や橋面に勾配がある橋梁への適用も実現する。
具体的には、常温環境下でも、圧縮強度が1平方ミリ当たり130ニュートン以上で、ひび割れ発生強度は1平方ミリ当たり6ニュートン以上を材齢28日で確保するため、床版の疲労耐久性を高める。高水密性・高遮塩性も有しており、劣化因子の浸透を抑制し、凍結融解や塩害による床版劣化も防げる。
そして、施工後3時間で圧縮強度が1平方ミリ当たり24ニュートン以上に達し、既設コンクリートとの付着強度を1平方ミリ当たり1.0ニュートン以上を確保して、施工後の迅速な交通規制解除を後押しする。これにより、夜間の車線規制だけで施工し、交通量の多い昼間には全車線を開放でき、道路利用者への影響を減らせる。
また、外気温ごとに設定した混和剤添加量を調整するだけで、常時安定した流動性を持たせられ、小型の施工機械を使用した人力での工事を可能とする。さらに、専用の車載ミキサーで練り混ぜを行うことで、連続施工も行え、車載ミキサーを含めた全ての設備が1車線内に収まるため、高速道路の夜間1車線規制内での施工もできる。
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