規制緩和で社会実装へ!マイクロ波によるワイヤレス給電は、未来のビルマネジメントをどう変えるか?:BAS(3/3 ページ)
エイターリンクは、マイクロ波を使うことで、長距離のワイヤレス給電を可能にする「AirPlug」を開発した、AirPlugは17メートルを超える場所に安定した電力を供給できる技術で、バイオメディカル、製造、ビルマネジメントなどの複数の領域で導入が期待されている。既に竹中工務店では、AirPlugとIoTセンサーを組み合わせた室内空調ソリューションを構築し、実証を経て2022年9月から静岡営業所で本格運用している。
AirPlugで実現するワイヤレス給電を活用した次世代ビル管理システム
AirPlugのビルマネジメント領域での活用に関しては、2021年10月竣工の竹中工務店 静岡営業所での先行事例がある。不動産業界では、コロナ禍によって在宅勤務が導入されたことによってオフィスへの出社率が大きく様変わりした。勤務体制の変化に伴うオフィスレイアウトの変更などもあり、オフィスニーズは多様化している。仮に空調だけに限っても、出社率やレイアウトによって異なる制御が求められる。
そこで、竹中工務店では、AirPlugとセンサーを組み合わせてセンシングを行い、オフィスのさまざまな要望に対応する室内空調ソリューションを開発し、2021年11月から空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムを稼働させ、2022年9月26日には日本初となるWPT局第1号を取得した。
竹中工務店の室内空調ソリューションは、オフィス床下にAirPlugの送信機、椅子の座面裏にAirPlug機能を持つセンサーをそれぞれ設置。人に近い場所でセンシングした温度や湿度などをビルの空調監視システムに送り、空調機と連携させている。
竹中工務店 技術研究所 未来・先端研究部 主任研究員 松岡康友氏は、「ワイヤレス給電は、これまでもずっと探していた技術の1つ」とし、給電効率の高さからエイターリンクと実証実験を伴走する形でスタートさせたと語る。
建築分野には、より快適な室内空間を整備するため、温度や湿度を人のより近くで取得したいという需要がある。しかし、ビル全体を対象にするには1万基ものセンサーが必要になり、配線や電池の交換を考えると極めてハードルが高い。しかし、こうした問題を解消するワイヤレス給電であれば、空調や照明の統合管理が容易に実現する。
松岡氏は、「空調・照明という既に顕在化しているニーズのみならず、エイターリンクが掲げる“Power As A Service”という世界が具現化し、どこにいても小さな電力が取れる空間となれば、他にもいろんなサービスやソリューションの開発につながるはず」と展望を口にする。例えば、壁掛けで充電状態にある空調のリモコンも、ワイヤレス給電ならば人の手元に置いたままで使えるようになる。
さらに、省電力で使える監視カメラやセンシング用センサーもワイヤレス化されると、メンテナンスコストが抑えられるだけでなく、設置の自由度が増す。そのため、あらゆる建築物を対象に、快適性、利便性、安全性を備えた高度な建築空間をワイヤレス給電の技術で生み出せるようになるかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- Hitachi Social Innovation Forum 2021 JAPAN:デジタルツインは建設業を魅力的な労働の場に変えるか?「3D K-Field」で“未来の建設現場”に挑む鹿島建設
IoTを活用して、建設現場の「ヒト」「資機材」「工事車両」の動きや状態をリアルタイムにデジタルツインで"見える化"する鹿島建設が開発した遠隔管理システム「3D K-Field」。建設現場をリアルタイムにデジタルツインで可視化するだけでなく、既に鹿島建設の赤坂本社や羽田イノベーションシティーで、スマートシティーのプラットフォームに採用され、街運営の多様なユーザビリティ向上に貢献している。 - 第4回 建設・測量生産性向上展:三菱電機らが業界初“ドップラーライダー”で現場上空の風を可視化、2023年に提供開始
三菱電機、竹中工務店、アクティオは、高所作業の安全確保を目的に、現場上空の風の状況をレーザー照射機と独自ソフトウェアで可視化する風況データソリューションの開発を進めている。 - Japan Drone2022:都市部での飛行許可が免除!“釣り”の発想から生まれた西武建設の外壁検査ドローンシステム
西武建設が開発した「ラインドローンシステム」は、建物外壁検査用ドローンシステム。屋上と地上の2点に固定されたラインの間をドローンが飛行するため、飛行の安全性が高く、人口密集地で使用する場合でも国土交通省航空局への飛行許可の申請が要らない。また、建築研究所や東京理科大学と共同で開発している「接触・微破壊式ドローン」は、飛行しながら人の手の届かない高所での削孔に成功した。 - 導入事例:乃村工藝社が新本社にタスク&アンビエント照明を導入、消費電力を53.8%削減
パナソニック エレクトリックワークス社は、東京都港区台場2丁目に位置する乃村工藝社本社のクリエイティブ執務フロアに52台のタスク&アンビエント照明を導入した。クリエイティブ執務フロアでは、システム天井の照明を消灯し、52台のタスク&アンビエント照明を点灯して運用しており、システム天井の照明を使用していた時と比較して、53.8%の消費電力を削減した。 - 導入事例:高速道路に実装可能な無線給電道路の実証を開始、大成建設
大成建設は、豊橋技術科学大学や大成ロテックとともに、走行中の電気自動車(EV)に連続して無線で電力を給電できる道路「T-iPower Road」に関する実証実験を実施している。今後は、低炭素化に対応したインフラの発展に貢献するため、走行中のEVに連続して電力供給可能な無線給電道路の実用化に向けた技術開発を進めていく。 - MaaS:未来の道路・モビリティインフラ「e-MoRoad」の実証実験を開始、大林組
大林組は、東京都清瀬市で保有する大林組技術研究所で、デンソーや古河電気工業といった多様なパートナーと協業し、モビリティの変革に対応した未来社会の道路・モビリティインフラ「e-MoRoad」を実現するための実証実験をスタートした。