高速道路に実装可能な無線給電道路の実証を開始、大成建設:導入事例
大成建設は、豊橋技術科学大学や大成ロテックとともに、走行中の電気自動車(EV)に連続して無線で電力を給電できる道路「T-iPower Road」に関する実証実験を実施している。今後は、低炭素化に対応したインフラの発展に貢献するため、走行中のEVに連続して電力供給可能な無線給電道路の実用化に向けた技術開発を進めていく。
大成建設は、豊橋技術科学大学や大成ロテックとともに、走行中の電気自動車(EV)に連続して無線で電力を給電できる道路「T-iPower Road(ティーアイパワーロード)」に関する実証実験を行っていることを2022年9月21日に発表した。
走行するEVに10kWの送電と給電効率70%以上の給電を達成することを目標に
国土交通省によれば、国内では、年間CO2総排出量のうち、運輸部門のCO2排出量は約18%を占めており、自動車関連が運輸部門の約88%に達していることから、自動車のEV化や関連する道路インフラの整備が運輸部門の低炭素化で注目されている。
しかし、車両本体だけでなく、EV化を進めるにあたり搭載するバッテリーの容量や寸法、重量、充電時間、航続距離、コストなど、車両を走行させる道路インフラ設備を整備する必要もある。
こういった状況を踏まえて、大成建設は、豊橋技術科学大学と大成ロテックと共同で、2012年に走行中のEVへ無線で電力を供給する道路の開発を開始し、2016年には1台の電源システムで延長約10メートルの道路に電力を供給する電界結合方式の無線給電試験道路を施工して、性能検証を行ってきた。
さらに、走行中の小型EVへの3キロワット(kW)無線給電に成功するなど、長距離と連続走行が可能な無線給電道路の基本システム構築に向けてノウハウを蓄積している。
一方、大成建設らは、上記の取り組みで培ってきた技術を発展させるために、現在、国土交通省国土技術政策総合研究所「道路政策の質の向上に資する技術研究開発」の委託研究(2020年〜2023年)に取り組んでおり、2023年までに商用車の通行が多い高速道路への実装を前提とした10kW無線給電が行える道路実用化システムであるT-iPower Roadの確立を目指している。
今回の委託研究では、T-iPower Roadの実証実験を通じて、高速道路で走行中のEVへの10kWの送電と給電効率70%以上の給電を達成することで、大型車両走行や中型車両、商用車の航続距離を大幅に伸長させる。
実証実験では、大成ロテック技術研究所で、「最大10kW出力の高周波電源接続による走行中車両への無線給電の実現」と「電界結合方式による無線給電道路(延長約40メートル)の施工に基づく高速道路への実装」を2021年8月〜2023年12月に検証する。
具体的には、電界結合方式による走行中のEVへの無線給電では、漏えい電磁界を抑えながら、少数の電源システムを用いることで、低コストで安全かつ効果的に連続して高効率での給電を実現する他、送電電極と1台の高周波電源を接続した延長約40メートルの無線給電道路上を走行中のEVが平均70%以上の受電効率で常に電力を受電できるようにする。
また、在来工法とほぼ同じ方法を用いて施工や維持補修・管理が可能で、従来の高速道路の交通量で大型車両が走れる舗装構造を実現する見通しだ。
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