30周年を迎えた「ThinkPad」 次の30年に向け、チャレンジを続ける製品開発の背景とは?:製品動向(3/3 ページ)
LenovoのノートPC「ThinkPad」は、1992年の登場以来、「あらゆる人にテクノロジーの恩恵を届ける」というスローガンのもと、顧客の成功を支え、環境にも配慮した技術の投入などによって市場に受け入れられてきた。レノボ・ジャパンの開発拠点となっている大和研究所のサイトリーダー塚本泰通氏は、これまでの歩みを「全ては顧客の成功のため、世界のために“挑戦”を続けてきた30年だった」と述懐した。
“Z世代”を意識?ThinkPadの“次の30年”を見据えた新シリーズ
急激に変化する市場環境や新しいユーザーに向けてThinkPad シーズに追加したのがThinkPad Zモデルだ。新登場したZシリーズに関しては、大和研究所 第一先進ノートブック開発 シニアマネジャーを務める渡邉大輔氏が解説。
Zシリーズには、これまでThinkPadが蓄積してきたコアバリューを生かしつつも、新しいユーザー層にもアピールする魅力を備えている。そこで、Zシリーズでは面を最大限に使い、直線を多用した薄いデザインとした。
Zシリーズが目指すのは、これまでThinkPadに触れてこなかった新しいユーザーの獲得。渡邉氏は、「新しいユーザー層に振り向いてもらうためには、多少でも他の製品と距離を置く、一線を引いた斬新なデザインが求められた」と話す。
Zシリーズは、プライバシー空間での安心感をもたらすカメラのプライバシーシャッターやポインティングデバイスにも新たに製品設計。キーボード中央に配置された「トラックポイント」はThinkPadの特徴の1つ。新モデルでは、横幅120ミリにまで拡大されたタッチパッドを使い、トラックポイントのユーザビリティを強化した。双方を連携することで、スピーディーな操作を実現した。
電子化されたプライバシーシャッター。F9キーを押すと、ISPがダミーの映像(黒画像)を出力する。一連の処理はハードウェアだけで処理され、OSやデバイスドライバが介在しないため、セキュリティ面でも安全だという
ZシリーズではAMDのプロセッサが搭載されるが、そのパフォーマンスを最大化するため、AMDプロセッサ専用のハードウェア設計を行い、渡邉氏は「熱設計には力を入れた」と力説する。
AMDと密接に協業することで、Z13モデルではハイエンドモデル向けに「Ryzen 7 Pro 6860Z」という専用プロセッサが供給。Z16では、AMD APU+AMD dGPU(ディスクリートGPU)の構成で放熱を管理し、薄い筐体でありながらも従来以上のパフォーマンスを獲得することに成功している。
長い歴史を持つThinkPadだが、その開発部隊は日々チャレンジを続けている。同時に、デザインを一新した新モデルでありながらもトラックポイントを搭載するなど、独自の哲学も貫く。
PCの利用環境やユーザーの志向が急激に変わる中、今後のレノボがどんなThinkPadを見せてくれるのか楽しみだ。
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