鹿島が“建機の自動化”をダム工事で本格導入、5時間の盛立作業に成功:自動で動く建設現場!
鹿島建設が開発を進める建設機械を自律自動化するICT技術「A4CSEL」がダム建設工事に本格導入され、計7台の建機が5時間にわたって無人で連続作業を行うことに成功した。次の段階では、30台ほどの建機を投入し、建設現場の「工場化」を目指す。
鹿島建設が施工を進めている福岡県の「小石原川ダム本体建設工事」で、建設機械の自動化による次世代の建設生産システム「A4CSEL(クワッドアクセル)」を導入し、初めて本格的な堤体の盛立作業を行った。
管制塔からの指示で、複数の建機が自動で連続作業
A4CSELは、「Automated/Autonomous/Advanced/Accelerated」の4つのAと、「Construction system for Safety , Efficiency , and Liability」を組み合わせた造語。これまであったリモコンを使ったICT建設機械の遠隔操作とは異なり、人間がタブレット端末で作業計画を指示し、複数の建設機械が無人で自動運転するICT技術を意味する。
この技術では、専用のICT建機を使うのではなく、一般的な建設機械にGPS、ジャイロセンサー、レーザスキャナーなどの計測機器や制御用PCを後付けすることで自動化を図る。自動運転の制御は、施工条件の異なる数多くの作業で、熟練オペレータの操作データを収集・分析し、取り入れているため、施工後には熟練オペレータと同等の施工品質が得られる。
さらに、リアルタイムで自己位置・姿勢、周辺状況を計測しているため、人や障害物の他、走路の安全性などを認識し、危険があれば自動停止/再開するため、安全性を確保した自律運転が可能だ。
これまでのテストでは、まず2015年に「五ケ山ダム建設工事(福岡県那珂川市)/工期:2012年6月〜2018年3月」で、自動振動ローラの実用化と自動ブルドーザの実証実験を実施。2017年には、「大分川ダム建設工事(大分県大分市)/工期:2012年6月〜2018年3月」で、自動ダンプトラックの運搬・荷下ろしから、自動ブルドーザでまき出し、自動振動ローラによる転圧までの一連の作業工程を自動化させている。
2018年11月に行った試験では、これまでテストを重ねてきた3つの自動化技術を本格投入。水資源機構発注の小石原川ダム本体建設工事でコア材の盛立作業を行った。現場では、管制室からの指示で、自動ダンプトラック3台、自動ブルドーザ2台、自動振動ローラ2台が5時間にわたる連続作業を行い、コア材一層分(約1300m3)の盛立を完了した。
鹿島建設では、次のフェーズとして、国内初の大型台形CSG (cemented sand and gravel)ダムが計画されている「成瀬ダム堤体打設工事(秋田県雄勝郡東成瀬村)」に自動化重機を20〜30台の規模で適用。堤体積485万m3(高さ114.5m、堤頂長755m)の台形CSGダムの堤体打設作業を行う。
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