水素燃料電池を現場の電源として活用する実証実験を渋谷で開始、東急建設と帝人:カーボンニュートラル
東急建設は、東京都渋谷区で計画を進める渋谷駅周辺開発の工事現場で、帝人とともに、水素燃料電池を現場の電源として活用する実証実験を2023年4月にスタートする。今後は、CO2排出量削減などの環境負荷低減に向けて建設工事現場での水素燃料活用を進め、脱炭素社会の実現を目指すとともに、SDGsの目標達成に貢献する。
東急建設は、東京都渋谷区で計画を進める渋谷駅周辺開発の工事現場で、帝人とともに、水素燃料電池を現場の電源として活用する実証実験を2023年4月に開始する。
使用する水素燃料電池は1台あたりの重さが約10キロと軽量かつコンパクト
夜間の建設工事現場では、照明や警告板といった電気設備を利用するために電源が必要となるが、通電がなされていないケースが多く、通常は軽油やガソリンを使用する発電機を利用している。しかし、軽油・ガソリンを用いた発電機は、CO2を排出するだけでなく、騒音、振動、臭気などを生じ、周辺住民の生活に影響を与えることが問題となっている。
一方、国内では、燃料電池自動車の用途を中心に、水素利活用の検討が推進されているが、日本では燃料電池自動車の普及が十分でなく、水素ステーションの稼働が低いことが課題となっている。
こういった状況を踏まえて、東急建設は、長期経営計画「To zero, from zero.」で、3つの提供価値「脱炭素」「廃棄物ゼロ」「防災・減災」を戦略の軸に据え、現場における発電時のCO2排出量を低減させるべく、水素燃料電池の活用に着目して実用化に向けた検討を行ってきた。
また、帝人は、「環境価値ソリューション」を重点領域とし、持続可能な循環型社会の実現に向けた技術や製品の開発を推進し、水素燃料電池の販売を2021年2月にスタートし、普及に向けて活動を実施している。
そこで、両社の取り組みや方向性が合致し、今回の実証実験を共同で実施するに至った。実証実験では、水素燃料電池の活用による騒音や振動などの低減効果を確認するだけでなく、水素燃料電池の安全性や信頼性を評価することなどを目的にしており、建設工事現場や水素燃料の普及における課題の解消を目指す。
具体的には、帝人が日本国内で販売する、英国に本社を構えるIntelligent Energy(インテリジェンスエナジー)が開発した水素燃料電池を活用する。使用する水素燃料電池は、1台あたりの重さが約10キロと軽量かつコンパクトで、携帯性に優れ、軽油あるいはガソリンを利用した発電機に比べて静粛性能が高く、廃棄物が発生しない。
水素燃料を貯蔵する圧力容器には、帝人グループの帝人エンジニアリングが展開する複合材料容器「ウルトレッサ」を採用する。ウルトレッサは、炭素繊維とガラス繊維から成る圧力容器で、軽量性、高耐食性が高く、自動車、消防、医療などの幅広い用途で数多くの実績を持つ。
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