ニュージーランドで年間100トンのグリーン水素を製造可能なプラントが竣工、大林組ら:プロジェクト
大林組は、Tuaropaki Trustとともに、ニュージーランドのタウポで開発したグリーン水素製造プラントで製造されるグリーン水素の試験販売をスタートした。今後、両社は、ニュージーランドの水素社会化を後押しするため、意欲的な水素価格の実現に向けた展開を進めていく。加えて、水素ステーションなど、社会インフラの整備促進に必要な技術開発と商品化を、今回のプロジェクトに賛同する企業との連携を強化しつつ推進している。
大林組は、Tuaropaki Trust(トゥアロパキ・トラスト)とともに、ニュージーランドのタウポ※1で建設を進めてきたグリーン水素製造プラントの開所式を開催し、製造されるグリーン水素の試験販売を開始したことを2021年12月14日に発表した。
※1 タウポ:ニュージーランドの北島北部の最大商都オークランドと北島最南端の首都ウェリントンの中間に位置する都市。地熱発電が盛んで、大規模な地熱発電所が多数存在する
グリーン水素は公共交通機関や物流施設などの車両用燃料で活用予定
ニュージーランドでは、政府が電力の再生可能エネルギー比率を現状の85%から2030年には100%にする政策を掲げ、その一環として水素の利活用が積極的に推進されている。そこで、大林組は2014年頃からニュージーランドの再生可能エネルギーが持つ将来性に着目し、2018年に同国で有数の地熱発電所を所有するTuaropaki Trustと共同で、地熱発電を利用したグリーン水素の製造プラント建設にタウポで着手した。
2021年3月のプラント完成以降、試運転や水素品質の確認、実証に関連する体制整備などが完了したため、同年12月9日に試験販売開始に向けた開所式を開いた。
左から、Tuaropaki Trust CEO Steve Murray(トゥアロパキ・トラスト スティーブ・マリー氏)、NZ Minister of Energy and Resources Megan Woods(ニュージーランド ミーガン・ウッズ エネルギー・資源大臣、Tuaropaki Trust Chair Gina Ranqi(トゥアロパキ・トラスト ジーナ・ランギ 議長)、在ニュージーランド日本国大使館 伊藤康一大使 出典:大林組プレスリリース
今回の水素製造プラントは、トゥアロパキ・トラストグループが所有および運営する地熱発電所の敷地内に建設され、地熱発電所から直接受電した再生可能エネルギー100%の電力によってグリーン水素を年間100トン(燃料電池自動車の燃料換算で1000台分に相当※2)製造できる。
※2 燃料電池自動車の燃料換算で1000台分に相当:燃料電池自動車(FCV)は水素1キロでおよそ100キロの走行が可能とされる。FCV1台が1年間に1万キロを走行すると想定すると、1000台分の年間の燃料が賄える製造量となる
現在、大林組とTuaropaki Trustの2社は、共同で設立した事業会社Halcyon Power※3(ハルシオンパワー)を通じてグリーン水素サプライチェーンの実証事業に取り組んでいる。今後は、製造や運搬にかかるコストを踏まえた価格設定とその社会受容性を調べるため、プラントで製造したグリーン水素の試験販売を開始する。販売したグリーン水素は、公共交通機関や物流施設などの車両用燃料、化学薬品工場の原材料といった産業用途で活用される予定だ。
※3 Halcyon Power:グリーン水素サプライチェーンの成立可能性を検証するため、大林組とトゥアロパキ・トラストが共同出資し設立した現地法人。グリーン水素の製造だけでなく、輸送から消費までのサプライチェーン全体を構築し、各段階での技術的、制度的課題とともにコストや社会受容性の把握を通じて、グリーン水素の普及拡大を目的としている
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 大分県内で低コスト・グリーン水素製造実証プラントの建設に着手、清水建設
清水建設は、市川事務所、エネサイクル、大日機械工業、ハイドロネクストと共同開発したグリーン水素製造技術を導入する実証プラントの開発に着手した。 - 竹中工務店の「脱炭素タウン」が進化、水素と再生エネでCO2削減
竹中工務店は先進技術を導入して街全体のCO2排出量を削減する「竹中脱炭素モデルタウン」の構築に取り組んでいる。このほど、その新しい取り組みとして水素エネルギー活用技術の実証がスタートする。再生可能エネルギーを活用した水素製造、さらにその貯蔵と利用までを統合制御し、CO2排出量の削減を目指す。 - パナソニックが場所を選ばない「純水素型燃料電池」の実証開始、発電は毎日8時間
パナソニックは、東京都江東区のパナソニックセンター東京で、同社製「純水素型燃料電池」の実証実験を開始した。今回の結果を踏まえて、2021年10月には5キロワットの発電出力を持つ純水素型燃料電池を発売する。 - 大林組らが「ドライ低NOx水素専焼ガスタービン」の技術実証試験に成功
大林組らは、川崎重工業が開発した燃焼技術「マイクロミックス燃焼」を用いた「ドライ低NOx水素専焼ガスタービン」を開発し、燃焼速度が速い水素燃焼で火炎の逆流を抑えながらいかに燃焼を安定させるかというドライ燃焼方式の課題を解消した。