パナソニックが場所を選ばない「純水素型燃料電池」の実証開始、発電は毎日8時間:製品動向
パナソニックは、東京都江東区のパナソニックセンター東京で、同社製「純水素型燃料電池」の実証実験を開始した。今回の結果を踏まえて、2021年10月には5キロワットの発電出力を持つ純水素型燃料電池を発売する。
パナソニックは2021年4月9日、東京都江東区のパナソニックセンター東京で、「純水素型燃料電池」の実証実験を開始したことに併せ、記者発表会を開いた。会場では、パナソニック アプライアンス社 スマートエネルギーシステム事業部 水素事業推進室 室長 青木仁氏が純水素型燃料電池と実証の中身について説明した。
約1分で起動し停電時の発電活用可能
パナソニック アプライアンス社の青木氏は、「パナソニックは、都市ガスやLPガスから取り出した水素と空気中の酸素を化学反応させて発電する家庭用燃料電池コージェネレーションシステム“エネファーム”を2009年5月に国内で発売した。その後、エネファームのコア技術“スタック”を活用して純水素型燃料電池の開発を進めてきた。スタックは、ガスや電気、水素を化学反応させて発電する技術で、純水素型燃料電池は、エネファームとは異なり、ガスを利用しないため、ガスの改質器を設けていないスタックを搭載している。純水素型燃料電池の実験はこれまで、山梨県の科学博物館“ゆめソーラー館やまなし”や静岡県のCO2削減事業“静岡型水素タウンプロジェクト”、水素情報発信拠点“スイソテラス”などで実施してきた」と語った。
続けて、「今回の実証で活用する純水素型燃料電池は、コンパクトな筐体サイズで700ワットの発電出力を備えている。純水素型燃料電池への水素の供給は、水素ステーションなどの水素インフラで行える他、酸素ボンベのような形状をしたシリンダーという容器に封入した水素からの補充にも対応しているので、純水素型燃料電池は場所を選ばず使える。また、複数台を連結すれば、メンテナンスにより1台が停止してもシステム全体で発電を続けられる。約1分で起動する利点を生かして停電時の発電にも使え、排熱を利用した湯沸かしなども可能だ。加えて、静音性に優れ、屋内の設置にも応じ、寒冷地でも役立つ」と述べた。
実証では、純水素型燃料電池を稼働させ、施設内で電力を自給するモデルを構築するとともに、手軽なオンサイト発電としてのポテンシャルを検証する。
実証機は、パナソニックセンター東京の西エントランス付近にある屋外スペースに配置しており、毎日8時間の発電を行い、パナソニックセンター東京に電力を供給する。また、1日の積算発電量を電子パネルで表示する他、実証機の横に自由に利用できる電源コンセントを設け、来場者が発電した電力を使えるようにしている。
なお、利用する燃料は岩谷産業が製造した低炭素水素を使用する。具体的には、シリンダーに封入し配送された低炭素水素を貯蔵庫に保管し、そこから実証機へ供給している。
今後の展開について青木氏は、「2021年10月に5キロワットの発電出力を持つ、純水素型燃料電池を法人向けに発売する。さらに、当社と岩谷産業で、太陽光発電や純水素型燃料電池、蓄電池を組み合わせたシステムを作り、パナソニックセンター東京で使用する電力を再生可能エネルギーで得られるような体制を構築し、RE100※1を実現する」と方針を示した。
※1 RE100:RE100は事業運営に使用する電気を100%再生可能なエネルギーで調達する取り組み
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