JUIDA 千田副理事長に問う、「社会実装元年」で幕開く“DaaS”時代と建設分野でのドローン用途:Japan Drone2022(3/3 ページ)
無人航空機の登録が義務化され、有人地帯での目視外飛行(レベル4)解禁も間近に迫っている。2022年をドローンの社会実装元年と位置付けるJUIDAは、DaaS(Drone as a Service: ダース)時代の到来を見据えた専門家養成講座の新設やテクニカルレビューの創刊など、日本でのドローン産業のさらなる発展を下支えする。
産業用ドローンは所有から、サービス利用の時代へ
「将来、産業用ドローンは、個々の企業がドローンを購入して自分たちで飛ばすことはなくなるのではないかとみている」と予測する千田氏が思い描く産業用ドローン市場の未来は、DaaS(ダース)=ドローン・アズ・ア・サービス(Drone as a Service)の世界だ。
「DaaSは私の造語ではなく、海外では使われている言葉で、要するに、所有や操縦は専門業者に任せて、サービスだけを受ける新たな市場を指す。農薬散布を例にとれば、実施するのは年に数回しかない。そのために100万円以上の機体を購入するとなると、躊躇(ちゅうちょ)する企業は多い。かわりに農薬散布の業務全般を、DaaSを提供する企業に依頼すれば、1回十数万円のコストで、維持管理費も要らないし、保険も安くなる。そうした機体や機器中心から、ドローンを取り巻くサービスが主体となる時代が来るのが、私が見立てる産業用ドローン市場のかたちです」(千田氏)。
そしてこの流れを大きく後押しするのが、レベル4飛行の解禁だという。「レベル4とは、現場に操縦者がいなくてもよいということ。東京にいながら北海道の農場で農薬散布、または全国どこからでも東京中のビルを点検といったサービスの提供が当たり前になるはず」(千田氏)。
ただし、実現のためには、ただドローンを飛ばせるだけでなく、ビル点検や農薬など、それぞれの専門業務に精通した人材の育成が不可欠だ。JUIDAでは、先を見据え、基礎教育(操縦技能証明、安全運航管理者証明)より、さらに専門的な技能や知識を学ぶ「JUIDA応用教育」を2020年にスタート。
第1弾は、ドローンを用いた石油化学プラント点検業務に必要な技能・知識を習得することで得られる「JUIDAプラント点検スペシャリスト」養成講習。第2弾は、「JUIDA認定スクールフェスタ2020」(2020年12月22日〜2021年1月15日、オンライン)で創設を発表した林業従事者向け資格「JUIDA森林測量スペシャリスト」養成講習。第3弾が、前述した「ドローン建築物調査安全飛行技能者」の養成講習となる。「今後は、他分野でも専門的な技能や知識を学ぶ講習を増やしていく計画。DaaS時代に対応できる資格を広げるのが、JUIDAが掲げる戦略だ」(千田氏)。
「JUIDAプラント点検スペシャリスト養成コース」は、総務省・厚生労働省・経済産業省がまとめた、「石化プラント点検のドローン活用に関するガイドライン」に準拠したもので、JUIDA、福島イノベーション・コースト構想推進機構、ブルーイノベーションが連携し、提供している 出典:JUIDA Webサイト
ドローン産業の発展を支え続けるJUIDAの活動
2014年の設立以来、JUIDAは、安全に飛行するための「JUIDA安全ガイドライン」作成、操縦者の安全教育「ドローンスクール」、世界各国の「無人航空機システム(UAS)」団体との国際交流協定(MOU)締結、日本の各省庁での委員会や協議会への参加など、国内ドローン産業の健全な発展を支援してきた。もちろん、今回で8回を迎えるJapan Drone2022の主催もその一環の取り組みとなる。
2022年4月28日には、ドローンに関する技術や研究論文を発表する雑誌「Technical Journal of Advanced Mobility」を創刊。日本は、中国や米国などに比べ、ドローンに関する特許件数や論文数が圧倒的に少ない。現状を変えるために、研究発表の場を用意し、日本の技術開発力を後押しすることが期待されている。
国内でもドローンの社会実装フェーズに入ったことで、ゆくゆくはDID地区を含む、全国の至るところでドローンが日常的に飛び交うのが日常風景となるだろう。これまでのドローン機体や搭載機器から、ドローンで取得したデータそのものの利活用が重視されるDaaS時代の到来とともに、新たなルール策定や啓発活動、人材育成のソフト面で、JUIDAの活動は今以上に意義のあるものとなってくるはずだ。
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