JUIDA 千田副理事長に問う、「社会実装元年」で幕開く“DaaS”時代と建設分野でのドローン用途:Japan Drone2022(2/3 ページ)
無人航空機の登録が義務化され、有人地帯での目視外飛行(レベル4)解禁も間近に迫っている。2022年をドローンの社会実装元年と位置付けるJUIDAは、DaaS(Drone as a Service: ダース)時代の到来を見据えた専門家養成講座の新設やテクニカルレビューの創刊など、日本でのドローン産業のさらなる発展を下支えする。
国内で産業ドローン市場はどう成長していくか?
国土交通省は先ごろ、2022年6月17日時点の登録件数が21万件に上ると発表した。千田氏は、「これからはさらに増え、30万件くらいに達するのでは」と推測する。拡大が見込まれる日本ドローン市場はどのように成長していくだろうか、千田氏はそのヒントを米国市場にみる。
「米国の登録機体数を経年的に追うと、ホビー用は頭打ちだが、産業用は堅調に伸びている。日本も産業用ドローンの社会実装フェーズに入り、これを機に産業用ドローンの領域が成長していくと予測される」(千田氏)。
しかし、中国のドローンメーカーDJIが、世界のホビー用ドローン市場で圧倒的シェアを占めたようなことは、産業用ドローンでは起きないという。「産業用ドローンは、使用する国の制約を受けるため、ホビー用と違い、世界単一のマーケットにはならない。例えば、農薬散布用ドローンといっても、農場の広さや農薬の種類、使い方が国ごとで全く異なるので、機体はそれぞれの地域の実情にアジャスト(調整)することは避けては通れない。それは、点検や測量でも同様。つまり、産業用ドローン市場は、小さなセグメントが無数にあるのが特徴だといえる。DJIは、日本で使用可能な農薬散布用ドローンを開発/販売しているが、日本で農薬散布できる機体は16種類あり、DJIといえどもその1つのメーカーにすぎない」(千田氏)。
産業用ドローンの利用が進むのは、「農業」「測量」「建設」
千田氏は、日本の産業用ドローンは、農業、測量、建設の3領域で、まず利用が拡大すると考えている。「特に、市場が拡大しているのが農業。農薬散布や肥料散布、放牧などでドローン利用が広がっている。次は測量で、国土交通省が主導するi-Constoractionの実施要領に基づき、公共工事の測量にドローン(UAV)使用を推奨する案件が増えていることが背景にある。測量以外の建設分野でも、工事の進捗管理をはじめ、高所での点検作業といった危険を伴う業務など、ドローンが活躍する場面はまだまだ余地がある」(千田氏)。
先立つことJUIDAは2022年6月9日、日本建築ドローン協会(JADA)と、建築物の点検や調査を対象に、ドローンの安全飛行技能者育成を目的とした「ドローン建築物調査安全飛行技能者」育成事業を創出することで合意した。理由としては、2021年9月に航空法施行規則が一部改正され、一定の条件で「係留」を使用した場合は、人口密集地などでもドローンの飛行申請が不要となったことがある。さらに2022年4月には、ドローンによる赤外線調査も認める省令が施行されたため(2022年3月29日付 国住指第1581号/国住参建第3982号)、ドローンを用いた建築物の点検や調査の需要が増加すると見越しての動きとなる。
ドローンによる外壁の赤外線調査は、「定期報告制度における赤外線調査(無人航空機による赤外線調査を含む)による外壁調査ガイドライン」を参考にすることが、国土交通省による技術的助言に示されている。ガイドラインによると、ドローン操縦者はドローン調査安全管理者の指示のもと、「ドローンを安全に飛行させ、劣化および損傷の状況を適切に撮影できる技能」を習得しなければならないと明記している。
JUIDAとJADAで新しく創設する講習は、座学と実技で構成された総合教育で、対象者はドローン操縦者。「建築物の点検/調査ならびに定期報告制度による外壁調査で、ドローンを安全に飛行できる技能者を育成していく計画だ」(千田氏)。
講習は、全国のJUIDA認定スクールで開催し、2022年冬の開講を目標に、カリキュラム作成などを進めている。講習期間は3日〜1週間を予定しており、講習修了者には「ドローン建築物調査安全飛行技能者」の修了証を発行する。
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