原木の調達や建材の製造に対応する工場が鹿児島で完成し本格稼働開始、MEC Industry:プロジェクト(2/2 ページ)
MEC Industryは、鹿児島県姶良郡湧水町で開発を進めていた「鹿児島湧水工場」と「鹿児島湧水素材センター」が2022年6月に本格稼働したことを公表した。
戸建て住宅「MOKUWELL HOUSE」や新建材「MIデッキ」を製造
製造棟では、製材棟で製材された板材からCLTや2×4材などの高性能建材を製造し、それらの建材を活用して、プレファブリケーション化した戸建て住宅「MOKUWELL HOUSE」と新建材「MIデッキ」を製造する。
CLTとは、Cross Laminated Timber(直交修正板)の略称で、ラミナを並べた後、繊維方向が直交するように積層接着した木質建材で、厚みがあり、断熱性や遮炎性、遮熱性、遮音性も持ち、製造棟で製造したCLTは主にMOKUWELL HOUSEの製造で利用される。
MOKUWELL HOUSEは、国産材(南九州県材)のCLTや2×4材など、工場であらかじめ作られた部材を現場で組み立てる建築工法を用いた高品質・低価格の戸建て住宅で、工場では、丸太の製材からCLTなどへの加工、躯体の組み立て、内装工事までを行い、現地では仕上げ工事が中心となるため、短工期での提供が可能となる。
具体的には、中間コストのカットと現場作業人工の削減により低価格での提供を達成し、床と天井にCLTを、壁に2×4パネルを活用したことで、高強度、断熱耐火に優れ、耐震性の高い高品質な製品をとなっており、脱炭素・森林保全などにも貢献する。
さらに、タイプは「Smart」と「Cozy」の2種類を用意しており、間取りは24種類と多彩なプランバリエーションで、ライフスタイルに合わせて選べ、主な間取りは、延べ床面積は72.90平方メートルと97.82平方メートルの2種類。なお、MOKUWELL HOUSEの製造システムは特許出願済みだ。
MIデッキは、RC造・S造で使われる配筋付きデッキの一部に木をプラスした新たな建材で、製材棟で製材された板材から製造し、MIデッキと組み立てシステムは特許出願済み。
加えて、鉄筋と木が一体化された型枠にコンクリートを打設することで、従来の天井仕上げと比べて天然木のぬくもりが感じられる空間を創出し、コンクリート打設で必要な型枠材と天井仕上げ材を兼用することでコストをカットし、支保工や配筋手間、脱型プロセス、荷揚げ作業を減少し、施工負担も軽減する。MIデッキを「現し」で利用することで、天井下地と天井仕上げ材が不要となり、施工負担をより減らせる。
既に、MIデッキは、三菱地所グループが開発したホテルや事務所など、複数の中・高層建築での導入が進んでおり、外販もされ、今後も全国の大都市圏を中心に供給していく。
工場敷地内の製材棟やオフィス棟、受付棟は、国産材を使用し、温かみのある場を創出し、受付棟1階の食堂は社員だけでなく、地域住民にも開放することで、地元住民との交流や連携を強化して、地域創成にも貢献する。
また、MEC Industryでは、事業活動で生じる、あらゆる山林資源を活用した製品を開発・供給し、これまで活用されていなかった資源だけでなく、製品になる前の部材も建材などとして供給することで、森林資源の循環と新たな市場の開拓を目指す。
鹿児島湧水工場と鹿児島湧水素材センターの概要
鹿児島湧水工場は、製材棟と製造棟で構成され、延べ床面積は2万6981.70平方メートル。所在地は鹿児島県姶良郡湧水町木場3102で、敷地面積は9万845.54平方メートル。
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