外壁面を自由にデザイン可能で大きなスラブの跳ね出しも容易な木造新構法、三菱地所ホーム:新構法(1/2 ページ)
木造戸建て住宅の建築で、2×4工法(枠組壁工法)や在来工法(木造軸組工法)は、技術が一般的に公開されているオープン工法であるため、多くの施工会社で使用されてきた。しかし、両工法は、構造材やクギのサイズ、使用方法、使用箇所などが国の告示で厳しく決められているため、デザインへの多様なニーズに応えるのが難しかった。そこで、三菱地所ホームズは、外壁面を自由にデザインでき、大きなスラブの跳ね出しなどが可能な新構法を開発した。
三菱地所ホームは2020年9月3日、新たな木造構法「Flat Mass Timber(FMT)構法」と同構法を用いた木造注文住宅ブランド「ROBRA」の記者発表会を都内で開いた。会場では、三菱地所ホーム 代表取締役社長 加藤博文氏や執行役員 月田徹氏が、FMT構法の開発背景や概要について紹介した。
壁倍率14〜20倍の高耐力を実現
冒頭、FMT構法の開発背景について、加藤氏は、「以前より三菱地所ホームでは、高額で高意匠な戸建て住宅を注文するの顧客が多い。当社の2019年度実績によれば、戸建て住宅を注文した顧客の33%が請負工事金額5000万円以上の物件を発注していた。デザイン性の高い建物を注文するユーザーのニーズを従来工法のみで対応するのに限界を感じていたため、FMT構法の開発に乗り出した」と話す。
また、「木材の積極的な活用を促す意図もあった。FMT構法は、RC造の80%に相当するコストで、RC造と同等量の開口部を設けた木造住宅が建築できるため、木造物件の注文量拡大を実現し、木材の利用量が増大すると考えている。同時に事業領域拡大も見込んでおり、当社では、木造戸建て注文住宅の建築を主要事業にしているが、FMT構法は小規模のクリニックやオフィスビルの建築に適用可能なため、非住宅事業の売上アップに結び付くと想定している。施設の建築で新工法を利用する利点は、現在小規模のビルやクリニックなどのRC造施設を建てる場合は、対応可能な施工店の確保が難しいが、木造を手掛ける工務店は多いため、スムーズに工事を進められることだ」と説明した。
次に登壇した月田氏はFMT構法の概要について解説。FMT構法は、構造壁に、厚さ150〜180ミリで、壁倍率14〜20倍の高耐力の集成材厚板パネルを用いているため、建物の耐震等級3を維持しながら、構造壁量を一般の2×4(ツーバイフォー)工法と比べて、6分の1から7分の1まで抑えられる。少ない構造壁量で躯体を構築できるため、既存の木造構法では困難だった開放的な室内空間を作れる。さらに、構造壁が少量で済み、構造壁を外壁として扱う必要がなくなるため、外壁面を自由にデザインすることが可能。例えば、建物の各階層で異なる外壁の配置や曲線状の外壁採用、連続的な開口部の設置などが行える。
使用する高耐力集成材厚板パネルは、材質が対称異等級集成材で、樹種はひのきを採用しており、主に鉛直方向と水平力に耐力を備えている。壁倍率14〜20倍の高耐力は、7種の専用金物で壁と上下階の鉄骨梁(ガーダー)や構造床(スラブ)を緊結することで実現している。専用金物は引っ張り用ラグスクリューボトルや引っ張り用ラグスクリューボトル受け金物、引っ張り用ラグスクリューボトル分岐金物、せん断用金物、せん断用金物受け金物と親子フィラーなど7種。
地震時には、構造壁に水平力が働くとともに、せん断力とロッキングによる端部の引っ張り力が発生するが、それぞれをせん断用金物や引っ張り用金物が負担する。構造壁の四隅に作用する引っ張り力に関しては、引っ張り用金物やアンカーボルトで受けた後、ガーダーに流し、引っ張り用金物の負荷を抑制。加えて、上下階の構造壁とガーダーを接続することで、応力を下階の構造壁に伝達する仕組みとなっている。なお、既に全ての専用金物と新構法は特許を取得済み。
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