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CO2を排出せずに電気を生む、工事現場に適した燃料電池式のデンヨー製発電装置第4回 建設・測量生産性向上展(2/2 ページ)

工事現場では、工事内容や期間などに応じて、さまざまなタイプの発電機が導入されている。従来は、発電能力で選ばれていた感がある発電機だが、昨今は環境に配慮したタイプにも注目が集まっている。工事現場周辺への影響を抑えるため“静音”や“低振動”をアピールする発電機は現在でも多いが、最近は加えて、燃料電池タイプの製品も登場している。

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燃料電池自動車の発電技術を活用し、可搬形発電装置を実現


デンヨーが参考展示した燃料電池式可搬形発電装置「H2」。“参考展示”ということで、外装にはクリーンかつ親しみやすいイメージの意匠が施された

 騒音や振動が日常的に発生する工事現場だが、昨今は環境意識の高まりによって、地球環境の保全に配慮した製品が求められるようになった。しかし、建設現場の電源として使われる発電機は、まだエンジンによるものが多く、稼働時にCO2を排出し続ける。当然ながら、長時間動かすことが前提の工事現場では、改善が求められる点とされている。

 デンヨーは、工事現場に限らず、野外イベントやTV中継、停泊中の船舶などで利用される多様な規模に応じた発電装置を販売している。また、溶接機やコンプレッサー、投光器など、“現場”に欠かせない各種の機器や設備を手掛けるメーカーとして知られている。

 そうした経験から、今展でデンヨーが出品した燃料電池式可搬形発電装置「H2」は、1つの答えとなる。H2は、環境省「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」の採択を受け、2019年度より進めてきた研究開発が結実したものだ。


H2は環境省の実証事業として開発された

 水素と酸素の化学反応によって発電を行う燃料電池は、従来型の発電機のように機械的な発電機を持たない。可動部分が無いので振動しないため、大きな音も出ない。また、エンジンがないので、CO2を排出しない利点がある。

 H2は、燃料電池式フォークリフトの発電システムを採り入れている。ちなみに、燃料電池システムの発電部は、トヨタの燃料電池車である初代「MIRAI(ミライ)」のセル技術が使われている。

 燃料電池から出力される電気は直流だが、建設工具などで使う電気は交流。そのため、直流から交流へ変換する燃料電池専用のパワーコンディショナーは、デンヨーが新たに開発した。

CO2排出ゼロ以外にも、多くのメリットのある「H2」

 燃料電池による発電は、CO2を排出しないだけでなく、それ以外にも優れた点が多い。H2」の場合、発電に必要な水素はボンベによって供給。そのため、大掛かりな設置工事は不要で、場所を選ぶことはなく、工事の進捗に応じて移動も可能だ。

 この他、内燃機関も持たないので、稼働時の音が静か。展示されたモデルだと、稼働中でも60〜70デシベル程度の音しか出さない。60デシベルというと、“デパートの店内”や“普通の会話”と同等で、70デシベルは“高速走行中の自動車内”と表現される。

 ブースで来場者の対応にあたった説明員は、工事現場の発電装置として使われるエンジン式発電機の騒音を「80デシベルくらい」と話す。80デシベルは“パチコン店内”の騒音レベルだが、これを想像すると、60〜70デシベルに抑えられている燃料電池式発電装置の静かさがイメージできる。実際にブースでも、稼働している装置の隣で会話していても支障はなかった。

 H2は、環境への配慮と現場での使いやすさを両立した電源として、燃料電池式の発電装置への期待は高い。また、発電時に、水しか排出されないので環境を悪化させない。発電の際に作られる生成水は、外部にタンクに用意すれば貯めて、他の用途に使うことも可能だ。

 H2の参考製品に限っては、出力が控えめな7.0kVAであり単相のみで、使用する機器や工具に制限があり、出力に対して本体サイズもやや大きめ。しかし、こうした部分については、今後の技術開発で解消される可能性がある。


ブースには、ディーゼルエンジン発電機や燃料電池電源車も展示

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