福島県・浪江町で国内初の水素供給ネットワーク最適化に向けた実証運用を開始、大林組:導入事例
大林組は、福島県双葉郡浪江町で取り組んでいる「既存の再エネを活用した水素供給低コスト化に向けたモデル構築・実証事業(環境省委託事業)」の一環として、水素を複数の拠点に運搬する際の搬送効率向上を目的とした1年間の実証運用を開始した。実証では、町内施設への水素供給により、搬送コストの低減効果を検証するとともに、実利用を通じて水素の魅力を伝えることで、需要の喚起と拡大を図れる。なお、エネルギーマネジメントシステムを用いて水素供給ネットワークを最適化する実証運用は国内初だという。
大林組は、福島県双葉郡浪江町で取り組んでいる「既存の再エネを活用した水素供給低コスト化に向けたモデル構築・実証事業(環境省委託事業)」の一環として、水素を複数の拠点に運搬する際の搬送効率向上を目的とした1年間の実証運用を開始したことを2022年4月12日に発表した。
各施設の電力や熱需要、水素の残量・圧力を遠隔監視
浪江町は、ゼロカーボンシティー構想を策定し、町内で製造される水素を活用して、水素社会実現の先駆けとなるまちづくりを推進している。さらに、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業として、2020年4月から、太陽光エネルギーを用いた水素製造プラント「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」の実証稼働を実施中だ。
一方、大林組でも、FH2Rで製造された水素をボンベなどで配送する、既存の再エネを活用した水素供給低コスト化に向けたモデル構築・実証事業に取り組んできた。
加えて、水素需要拠点の設備設置工事が完了したことに伴い、FH2Rから、浪江町に点在する「いこいの村なみえ(温浴施設)」「ふれあいセンターなみえ(介護施設)」「復興事業現場事務所」「浪江町役場(公用車用簡易型水素ステーション)」といった4カ所に水素を運び、電力や給湯、燃料電池自動車の燃料として利用する水素供給ネットワークの最適化に向けた実証運用を開始した。
実証では、最適化に向けた水素の需給量や搬送状況を遠隔監視する仕組みとして、大分県玖珠郡九重町で開発した「水素製造プラント向けエネルギーマネジメントシステム※1」を機能拡充させた「最適運用管理システム」を構築。
※1 エネルギーマネジメントシステム:水素搬送車両に装着したGPS端末から搬送状況を把握し、車両の発着スケジュールに合わせてプラントを停止せずに効率よく連続運転できる制御システム。
具体的には、これまでは水素の供給拠点と搬送地点を個別に結び最適化を図っていたが、最適運用管理システムは、供給拠点と複数の施設を連携させた地域全体での最適化を図れる。
今回のシステムでは、各施設の電力や熱需要、水素の残量・圧力を遠隔監視するとともに、搬送トラックの運行状況をGPSにより把握することで、自動で搬送計画を作成、搬送指示を行う他、水素需要状況を水素製造プラントにフィードバックすることも可能で、搬送を通じた水素サプライチェーン全体の効率化にも貢献する。
また、2022年4月10日に開催された「第3回なみえ水素まつり」の一環として、実証運用開始セレモニーが執り行われ、最適運用管理システムを始動し、1年間にわたり実証運用を行い、搬送費用削減効果を検証していく。
今後は、最適運用管理システムを地域のインフラとして構築することで、水素サプライチェーンの拡大と水素利用の普及を目指す他、大分県玖珠郡九重町やニュージーランドで取り組むグリーン水素の製造、輸送、貯蔵、供給のサプライチェーン構築にもこのシステムを活用することで、脱炭素社会の実現を推進する。
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