デジタルツインは建設業を魅力的な労働の場に変えるか?「3D K-Field」で“未来の建設現場”に挑む鹿島建設:Hitachi Social Innovation Forum 2021 JAPAN(3/3 ページ)
IoTを活用して、建設現場の「ヒト」「資機材」「工事車両」の動きや状態をリアルタイムにデジタルツインで"見える化"する鹿島建設が開発した遠隔管理システム「3D K-Field」。建設現場をリアルタイムにデジタルツインで可視化するだけでなく、既に鹿島建設の赤坂本社や羽田イノベーションシティーで、スマートシティーのプラットフォームに採用され、街運営の多様なユーザビリティ向上に貢献している。
「3D K-Field」で維持管理フェーズに新たな価値を創出
天沼氏は今後、鹿島建設は、「建物のライフサイクルのなかでも、期間の長い、維持管理フェーズでの価値提供を高度化」させていくとの方向性を示し、現在は3D K-Fieldを用いて進めている2件のスマートシティー事例を披露。
その1つが、鹿島建設赤坂本社で進める“スマートビル”の取り組み。快適なオフィス空間と、施設の有効活用を実現するために、従業員の位置情報や会議室、トイレなど、施設の利用データを収集する実証だ。
データ収集にあたって、位置情報取得用のゲートウェイや、部屋の利用率を取得するためのセンサー、人数をカウントしたり人の属性情報を取得したりするためのカメラを設置した。収集したデータを3D K-Fieldで可視化し、従業員の在席エリアの検索や食堂の混雑状況、エレベーターホールの混雑状況、会議室の利用状況、打ち合わせ机の利用状況などの見える化を進めている。
蓄積したデータは現況の見える化だけでなく、動線分析や滞留分析、施設利用率や従業員の在席場所の確認などにも活用する。
もう1つが、鹿島建設が幹事会社を務める羽田みらい開発による「HANEDA INNOVATION CITY(羽田イノベーションシティー)」での検証だ。
羽田イノベーションシティーは、国土交通省のスマートシティーモデル事業で先行モデルプロジェクトに選定され、2020年7月にオープンした先進的な街づくり事業。ロボットによるサービス業務の支援やスマートモビリティによる移動補助など、さまざまな取り組みの実証を行っている。
3D K-Fieldは、人や自動運転車、ロボットなど多分野のデータをリアルタイムに一元的に集約するプラットフォームとして、街全体のデジタルツインを実現している。データは、施設のデジタルサイネージ(電子掲示板)に掲示し、目的地までの経路、会議室やトイレの空き状況などをリアルタイムに来場者へ提供するなど、リアル空間にデジタル情報をフィードバックする取り組みも進めている。
これからは、3D K-Fieldを相互連携させることで、スマートシティーで得られるさまざまな分野のデータを蓄積していき、新しいサービスを創出していく。
多様な用途での「3D K-Field」の活用をめざす
鹿島建設は2021年10月時点で、既に10件以上のプロジェクトに3D K-Fieldを導入しており、2024年までには同社の全建築現場へ適用する方針を示している。さらに、鹿島建設が新たに建設する施設だけでなく、「病院や工場、物流施設、商業施設、ホテルなど、さまざまな用途の既存施設への導入を目指して開発を進める」との展望を語り、天沼氏は講演を結んだ。
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