マンションにEV充電機器を“無償提供”する「Terra Charge」、Terra Motors 徳重会長の狙いは?:スマートシティー(2/2 ページ)
急速に電気自動車の普及が進むインドで、電動三輪車のトップシェアを獲得しているベンチャー企業「Terra Motors」。2022年4月にはEV充電インフラ事業に新規参入し、既設マンション向けの機器導入サービス「Terra Charge」がスタートした。機器の設置費用から施工、その後の管理まで、全てを無償で提供する利益度外視な新規事業によって、国内EV市場の活性化を目指す。Terra Chargeのサービスが「起爆剤になって欲しい」と、取締役会長の徳重徹氏は語る。
スマホアプリで簡単に操作できるEV充電機器「Terra Charge」
Terra Chargeは、既設マンション向けの機器導入サービス。EV充電設備を持っていない集合住宅を対象に、Terra Motorsが無償で設置工事を行う、赤字覚悟の取り組みだ。施工だけでなく、充電時間の設定や電子決済を行う専用アプリ、管理システム、サービス開始に必要な管理組合への説明、ソフトウェアの運営まで、一貫して提供する。
設置された充電機器は、ユーザー用のスマホアプリで、事前に住所やクレジットデータなどの情報を登録しておけば、誰でも利用可能。機器上部に貼り付けてあるQRコードにアクセスし、充電時間をあらかじめ予約する方式になっている。終わった後は、アプリを通して、自動で料金を請求。充電中はコンセントが引き抜けなくなる仕様になっているので、盗難防止設備も万全だ。
まずは、マンション住居者に絞ってサービスを提供していく予定になっているものの、台数が増えれば、GPSで近くの充電ポイントを探し、スマホ上で予約できるシステムも実装している。
取締役兼CTO 高橋成典氏は「設置する充電器はコンセントに突き刺すだけの簡易タイプなので、操作方法も難しくない。充電1回の料金も、150〜200円と良心的」と胸を張る。
さらに、管理者側についても、充電サービスの予約や利用状況の確認ができる専用アプリを開発。デバイス上のアプリだけで管理業務が完了するため、負担にはならない。初期の段階では、小型の簡易設置可能な機器に絞っているが、いずれは複数の車をより急速に充電する大型設備の導入も視野に入れている。
EVの少ない日本で、それでも充電インフラ整備に舵を切る理由
とはいえ、いくら画期的なサービスだとしても、EVの少ない日本の現状では流行しにくいと考えるのが自然だ。同社がそれでも、充電インフラの整備に事業の舵を切るのはなぜなのか――。
徳重氏は、「EV事業の先駆者として、そのリスクは背負っている」ときっぱり。たとえ直近の利益に結び付かなくとも、Terra ChargeによってEVの間口が広がり、利用者の拡大に貢献できればうれしいとうなずく。「数年後、欧州のように需要が伸びた際を見据えて、精力的に事業を拡大し続けていければ」。
将来は既設マンションのみならず、宿泊施設やオフィスビル、商業施設などへの設置も検討中。既に運送事業者などフリート事業者との業務提携についても具体的に話を進めているという。「あらゆる場所でのEV充電を可能にし、EVドライバーにとってより良い環境構築に貢献していく」と高橋氏は語る。
EVの普及に向けて、根本的に抱えている日本の課題を解決するために導入された新サービスTerra Charge。Terra Motorsの取り組みは、国内自動車市場を先取りする先見の明となるのか。EVの持つ可能性に、これからも注視していきたい。
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