“南海トラフ地震”を想定、国際航業やKDDIらが複数ドローンの完全自動航行を実験:ドローン
国際航業、KDDI、ウェザーニューズは、災害発生時に複数のドローンやヘリコプターの航行を管理する飛行環境整備を目指し、「UTM(運航管理システム)」の機能検証を三重県志摩市で行った。
国際航業、KDDI、ウェザーニューズは2021年3月末、KDDI、ウェザーニューズとともに同年3月6・7日に、三重県志摩市の国府白浜海岸で、南海トラフ地震を想定したシナリオで、複数のドローンを「UTM(運航管理システム)」に接続した実証実験を行った。その結果、目的とするデータ収集やドローン完全自動航行の実現に向けたUTMの機能検証に成功した。
運航管理システムは「KDDIスマートドローン」の管制システムを活用
東日本大震災の発生から10年を迎え、災害・防災分野での新たなテクノロジー活用の期待が高まっており、とくにドローンは「空飛ぶカメラ」として、迅速な情報収集と意思決定の支援が可能なため、全国の消防本部や自治体への配備も年々進んでいる。
今後、災害発生直後の現場上空には、ヘリコプターをはじめとする複数の有人機が飛び交う状況が想定されている。そのため、ドローンを安全かつ効率的に利活用するには、有人機とドローン、ドローンとドローンのコンフリクト回避を含めた技術面・制度面での飛行環境整備が必要不可欠となる。
実証実験では、有人航空機やドローンによる豊富な災害調査活動の実績を有する国際航業が、南海トラフ地震と津波による災害後の調査活動をシミュレートしたシナリオを策定。シナリオに基づく飛行計画を、KDDIの遠隔制御で安全な長距離飛行が可能なドローンサービス「KDDIスマートドローン」の管制システムに接続し、DJI製「MATRICE 300」の実機を飛ばしてドローンの運航及び計測を行った。取得したデータの画像解析には、国際航業の3次元空間解析クラウドサービス「KKC-3D」で解析し、複数の写真から3次元モデルを生成した。
KDDIスマートドローンは、ドローンが日常生活を支えるインフラとして、運送・監視・農業などのさまざまな分野で活躍する社会の実現に向け、4G LTEなどのモバイル通信でドローンを遠隔制御し、安全な長距離飛行を実現するプラットフォーム。2022年度に政府が実現を目指す市街地など有人地帯の上空で目視外飛行が行える“目視外飛行(レベル4)”運航では、運送・警備などさまざまな用途でドローンの運航を担う事業者が自社のドローンを管制するシステムが必要とされるため、KDDIでも2021年度中の運用開始を目標に、独自のUTM構築を進めている。
KDDIスマートドローンのネットワークには、接続された日本国内全域のドローンに加え、ヘリコプターなどの有人機の管理システムと接続しているため、安全に飛行するための管制業務が円滑に行える。運行中のドローンやヘリコプターの接近時のアラートはマップ上に表示されるため、管制担当者がドローンの衝突を回避できる。
さらに、災害時に救助機関などのヘリコプターが同一空域に飛来することも想定し、ウェザーニューズが提供する有人航空機小型動態監視システム「FOSTER-CoPilot」のヘリコプター仮想位置情報を、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のドローン運航管理(UTM)シミュレーターによる仮想ドローン及び仮想ヘリの運航情報をKDDIの管制システムと共有して、より複雑な実証実験を実施した。今回の協力者は、三重県、三重県志摩市、KDDI、ウェザーニューズ、JAXA、慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム、エアロ・フォト・センター、テラドローン、プロドローン、その他事業者。
実証実験そのものは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から、KDDIとパーソルプロセス&テクノロジー」が受託した“目視外飛行(レベル4)”の実現を目指す「無人航空機の運航管理システム及び衝突回避技術の開発/地域特性・拡張性を考慮した運航管理システムの実証事業」の一環として行った。実証事業では、2021年度末までに、有人地帯での目視外運航を実現するために、ドローンの運航管理機能の開発と持続可能なビジネスモデルの確立に向けた西日本(兵庫県)、東日本(宮城県)、災害時想定(三重県)の3エリアでの先行実証を行うもの。
今後は、実証実験の結果を踏まえ、ドローン運航管理システムの技術面や運用面での課題を洗い出し、改善や検証を通じて、災害時におけるドローンの完全自動航行に向けた環境整備を進めていく。
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