マンションにEV充電機器を“無償提供”する「Terra Charge」、Terra Motors 徳重会長の狙いは?:スマートシティー(1/2 ページ)
急速に電気自動車の普及が進むインドで、電動三輪車のトップシェアを獲得しているベンチャー企業「Terra Motors」。2022年4月にはEV充電インフラ事業に新規参入し、既設マンション向けの機器導入サービス「Terra Charge」がスタートした。機器の設置費用から施工、その後の管理まで、全てを無償で提供する利益度外視な新規事業によって、国内EV市場の活性化を目指す。Terra Chargeのサービスが「起爆剤になって欲しい」と、取締役会長の徳重徹氏は語る。
日本市場で、なかなか浸透していない自動車のEV(電気自動車)化。脱炭素化の動きもあり、世界規模で見てもEVの普及が進むなか、日本は中国やEU圏に比べて後塵を拝している。Terra Motors(テラモーターズ)は、そうした世界情勢を受け、業界に先駆けてEV充電インフラ事業へまい進。既設マンションに、初期コスト無料で充電設備を設置できるサービス「Terra Charge」を開始し、停滞しつつある日本のEV市場に一石を投じる。
日本でEVが増えない足枷となっている、充電インフラの不足
2010年に誕生して以降、EV先進国のインドを拠点に、さまざまなEV事業を手掛けてきたTerra Motors。2020年度には、インドで電動三輪車を2万台以上も売り上げ、国内シェアでも15%を獲得するなど、業界トップクラスのEV機器メーカーになるまで成長している。
しかし、日本では、いまだにEVの普及は進んでいないのが実情だ。徐々に各自動車メーカーが業務提携を結んだり、新車の開発に乗り出すなど、少しずつ動きは見られ始めたものの、活性化してきているかと問われたなら首をかしげざるを得ない。
「世界で急激に需要が増しているEV市場にあって、日本は出遅れていると言っても過言ではない」と話すのは、Terra Motors 取締役会長 徳重徹氏(兼テラドローン 代表取締役社長)だ。
低調が続く市場の現状は、販売台数からも見て取れる。2020年に世界で購入されたEVをみると、中国は93万台、欧州は64万台、米国は23万台でありながら、日本はわずか1.4万台。各国は着実に生産数を増やしているなかで、足踏み状態から抜け出せていない。
それゆえか、商業施設やホテルなどを中心に、2012年頃から設置台数を増やしてきたEV充電機器は、2020年に初めて減少。「採算が合わない」というオーナー側の理由から、撤去するケースも増えているようだ。それでも徳重氏は、「今後5年をめどに、必ず日本のEVは盛り上がりをみせる。それは、ここ5年で急速に市場を拡大させた欧州を見れば明らかだ。今充電機器を引き払うのは、もったいないと言わざるを得ない」と、この現状に異を唱える。
世界情勢も、徳重氏の考えを後押ししている。イギリスに本社を構える世界的な石油化学企業Shellは、2025年までにEV充電ステーションを50万カ所に設置すると発表。EU圏では、2035年までにハイブリッド車の生産を禁止とするニュースまで報道されるなど、今まさに、世界規模でEV普及に向けての潮が満ちている状態だ。
では、国内でEVの普及が進まない一番の要因は何なのか。それは、充電設備の不足が挙げられる。日本では、国民の約4割が集合住宅に居住しているとされているものの、このうちEV設備を完備している施設の割合は、わずか1%ほど。多くの集合住宅では、ランニングコストの観点から、EV充電器の設置は叶わず、住人がEVを持つ可能性を未然に潰(つぶ)してしまっている。「充電設備が増えないから、EVの普及も広がらず、せっかく設置した機器の撤去も進んでしまう。今の日本は、いわゆる悪い意味でのチキン&エッグ状態が続いている状態」。
その課題を解決すべく、Terra Motorsは2022年4月、電気自動車向けの充電サービス「Terra Charge」を開始。EV 化を前進させる第一歩として、マンションでのEV充電器の設置に取り組んでいく。
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