「BuilPass」の新機能で「ワテラス」飲食店のスマホ注文/決済を実証:スマートビル
東京・神田淡路町の安田不動産が運営する「ワテラス」内の飲食店で、テナントとして入居する日立製作所と日立ビルシステムの社員が、独自のオフィスワーカー向けアプリで注文と決済の実証を開始した。
安田不動産、安田開発、日立製作所(以下、日立)、日立ビルシステムは2022年5月、デジタル技術の活用によるオフィスビルの価値向上とビル周辺エリアの魅力向上に向けた協創を開始することに合意したと発表した。
第一弾の取り組みとして、安田不動産が所有する東京・神田淡路町の「ワテラス」で、日立のオフィスワーカー向けサービスプラットフォーム「BuilPass(ビルパス)」のアプリを活用した実証実験を同年5月23日に開始した。具体的には、ワテラス内の安田開発が運営する飲食店「Terrace 8890」とワテラスで働く日立と日立ビルシステムの社員が、BuilPassのスマートフォンアプリを用いて、事前にオンラインでテークアウト商品の注文と決済を行う。
BuilPassにオンライン商取引の機能を追加
BuilPassは、オフィスワーカーが、ビル内の施設予約管理、店舗から発信される情報の入手、就業者間のコミュニティー活動、非接触での入退室などを専用のスマホアプリで一元化するビル分野でのLumadaの新ソリューションとの位置付けとなっている。開発にはアイルランドのベンチャー企業SpaceOSと協創に向けた覚書を締結し、日立グループ内でのPoC(Proof of Concept:概念実証)を経て、2021年から本格的な提案活動を開始していた。
実証実験にあたり、BuilPassには、オンラインで商取引する機能を追加し、飲食店のテークアウト商品の注文と決済がスマホ上だけで完結するようになった。事前にキャッシュレス決済とすることで、飲食店と社員の双方の利便性を高めるとともに、注文商品の提供までのステータスをアプリ内に表示し、店舗での待ち時間などの無駄を省いたスムーズなやりとりが実現する。
4社による協創の背景には、ニューノーマルの多様な働き方に対応できるオフィスが求められていることと、都心部では、大規模なオフィスビルの供給が継続しており、テナント企業に選ばれ続けるために、デジタル技術による高付加価値を備えたスマートビルが必須となっていることがある。
先立つこと、日立と日立ビルシステムは2021年8月に、ニューノーマル時代に応じた働き方の実験場として、ワテラスにある日立ビルシステムの本社オフィスをリニューアルするとともに、BuilPassを導入。社員各自のスマホ上で、オフィスに関する配信情報の閲覧や出社時の座席予約などを既に始めており、さらなる機能拡張の検討を進めていた。
一方、安田不動産は2021年10月に、ワテラスの全電力を実質再生可能エネルギー電力に切り替え、電気購入由来のCO2排出量実質ゼロとし、年間約6000トンのCO2削減を図っている。また、ワテラスの位置する千代田区神田淡路町などで、「Wellness Discovery,WATERRAS」を掲げ、同エリアを拠点に地域貢献活動を行っている淡路エリアマネジメントと連携し、サステナブルな街づくりにも取り組み、オフィスに入居するテナントの満足度向上と、ビル周辺エリアの魅力向上を実現する新たなアプローチを模索していた。
こうした4社の意向が一致したことで、BuilPassをはじめとするデジタルソリューションを活用し、オフィスビルの高付加価値化、さらにはエリアの魅力向上につなげるべく、今回の協創に至ったという。
今後は、BuilPassにデータ集約や分析の機能を追加し、購買データを分析するなど、段階的に拡充していく。また、BuilPassの提供では、ビルIoTソリューション「BuilMirai」と組み合わせ、ビル共通プラットフォームソリューションとして、大規模な新規開発案件や既存ビルをターゲットに、年間5〜10棟の採用を目指す。
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