韓国で社会問題化しているマンションの“床間騒音” サムスンが最新研究施設を開設:新工法
韓国の共同住宅では、柱や梁の無い壁式構造が採用されることが多く、ここ数年のコロナ禍に伴うステイホームの定着とともに、どこかの階で発生した音が他の住戸に伝わる“層間騒音”が社会的な問題になっているという。
韓国サムスングループのサムスン物産 建設事業部門は2022年5月26日、ビルの各フロアの間で発生するいわゆる「床間騒音」をワンストップで計測する研究施設「ラミアン・コヨアン・ラボ」を韓国京畿道龍仁市内に開設した。
構造と床材の組み合わせで最適な騒音技術を検証
施設の延べ床面積は2380平方メートル、地下1階・地上4階建ての建物で、各階の床間騒音に特化した韓国内最大規模の研究施設となる。床間騒音を研究する施設に加え、騒音を体感できる「実体験ゾーン」を設けており、日常生活で生じがちな騒音問題を解決するための社会的コンセンサスを探求できる場となることを目指している。
特に、建物の階層別に床間ノイズを体験することで、複数の防音技術によって生じる騒音の違いを実証する機構を備えているのが特徴。床間騒音の低減技術を用いた直近の研究では、韓国内のマンションで一般的な耐力壁だけで建物を支える壁式構造、柱状構造、異種の構造を組み合わせた混構造、ラーメン構造といった4種類の構造で、騒音が伝播(でんぱ)する過程を解明している。
また、韓国の共同住宅で多く用いられる床スラブの厚さ210ミリだけでなく、250ミリや300ミリを適用し、床衝撃音のそれぞれの差を体感しつつ研究もしている。なお、4つの住宅構造形式と、210〜300ミリの床スラブ厚さを用いて検証するのはラミアン・コヨアン・ラボが初で、各構造別に床材を組み合わせることにより、最適な騒音低減技術を確立することが実現する。
既に、独自に開発した床間の騒音低減技術も試験適用。具体的には、床スラブの一部だけを厚くしながら、騒音を低減できる床構造をはじめ、層間でノイズ低減効果の高い重さのある高流動床材を利用した300ミリのスラブなどをテストしている。
サムスングループは、研究施設で確立した床間の騒音低減技術を、将来は韓国内の共同住宅に導入していきたい計画だ。サムスン物産のオ・セチュル代表は、「床間ノイズは産業界や研究機関などでしか解決できない問題」として、「ラボが社会的問題である層間騒音を解決する礎石になるよう努めていく」とコメント。
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