約50%の省人化を実現する天井下地接着工法を開発、清水建設:産業動向
清水建設は、天井改修工事の生産性向上を目的に、セメダインが製造するスポンジ状の接着シート「ATLAS」を用いた「天井下地接着工法」を開発した。
清水建設は、天井改修工事の生産性向上を目的に、構造用接着シートを用いた「天井下地接着工法」を開発し、東京都江東区で保有する技術研究所本館の天井改修工事に初適用したことを2022年2月3日に発表した。
接着剤が実用強度を発現するまでの時間は約6時間
天井改修工事では、天井下地と建物躯体の接合方法として溶接接合やボルト接合が主に利用されている。しかし、溶接接合には相応の経験とスキルが求められ、火災のリスクも伴う。さらに、ボルトの接合ではボルトを躯体に挿入するための穿孔作業が必要となり、騒音や粉じんの発生が避けられない。
そこで清水建設は、上記課題を解決する安全な天井改修工法として、構造用接着シートを用いた天井下地接着工法を開発した。
天井下地接着工法は、既存鉄骨梁(はり)の下にあるフランジの上面に取り付けた金物を介して天井下地を建物躯体に固定する天井改修工法で、最大の特徴は、鉄骨梁と金物の接合にセメダインが開発したスポンジ状の接着シート「ATLAS」を利用する点。新工法を適用することで、天井下地の設置工程における簡素化が図れ、作業に必要な人工数を従来工法の半分に抑えられる。加えて、作業時に粉じんや騒音が発生せず、火気も不要なため、作業員の労働環境改善にも役立つ。
新工法に利用する接着シートのATLASは、2種類の液剤とスポンジ状の樹脂シートをパッケージ化した構造用接着剤。使用時には、パッケージ上から圧力を加えて液剤を樹脂シートに含浸させた後、パッケージからシートを取り出し、所定の接合場所に配置する。続いて、天井下地固定用金物をシート上に設置し、接着剤が硬化するのを待つだけで、下地材の設置作業の準備が整う。なお、接着剤が実用強度を発現するまでの時間は約6時間で、シートの配置後、約1時間まで位置調整が可能。
また、新工法は、経験の少ない作業員でも簡単に作業ができる施工性の高さだけでなく、部材表面の不陸を接着シートのスポンジが吸収するため、部材の状況を問わず接着強度を確保するメリットもある。今後は、天井改修工事への適用を進めるとともに、他工種でも構造用接着シートの活用を模索し、建設現場の効率アップにつなげていく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 天井を配線ダクトにリニューアル可能な部材、パナソニック LS社
パナソニック ライフソリューションズ社は、天井を配線ダクトにリニューアル可能な「イージーアップ配線ダクト」と、木漏れ日や水面などの映像を投影できるダウンライト型プロジェクター「バイオシャドー」を開発した。 - 地震時に建物の崩落リスクを低減するダイワハウスの耐震吊り天井「Dタフ天井」
政府の中央防災会議で検討された南海トラフ地震の被害想定は、静岡県から宮崎県にかけて一部で震度7となる可能性があり、両県に隣接する周辺地域では震度6強から6弱の強い揺れになるとしている。南海トラフ地震の対策として、大和ハウス工業は、地震時に建物崩落を防ぐ耐震吊(つ)り天井「Dタフ天井」を開発した。2020年6月9日には、Dタフ天井の特定天井タイプで、日本建築総合試験所の建築技術性能証明を取得した。 - 天井と空調機の耐震性を同時に向上、天井ブレースの要らない大林組の新制振システム
大林組は、天井裏にブレース無しで、設計と施工の自由度を大幅に向上させる天井と空調機の新たな制振構法を開発した。 - 大和ハウス、建物の天井施工作業を軽減できるアシスト機器を開発
大和ハウス工業は、建設現場の働き方改革として、建物の天井施工作業を軽減できるアシスト機器の開発を発表。高負荷作業を軽減でき、床から作業ができるため墜転落のリスク軽減にも役立つ。