住宅のライフサイクル全体でCO2収支マイナスに、BF構法を採用した住友林業の「LCCM住宅」:カーボンニュートラル
住友林業は、戸建て住宅のライフサイクル全般にわたり、CO2収支をマイナスにする「LCCM住宅」を全国で発売した。年間100棟の受注を目指すLCCM住宅には、オリジナルの木質梁勝ちラーメン構造「BF構法」を採用することで、0.3ヘクタールの杉林が50年間に吸収するCO2量に相当する炭素固定量が実現する。
住友林業は2022年4月22日、優れた断熱性能や高性能な設備機器、大容量太陽光発電システムなどの創エネルギー機器を駆使した環境フラグシップモデル「LCCM(ライフサイクルカーボンマイナス)住宅」を発売した。LCCM住宅は、木の家の利点を生かし、住宅のライフサイクル全体でCO2収支をマイナスする。
オリジナルの「BF(ビッグフレーム)構法」で長期間炭素を固定
LCCM住宅とは、建設時、居住時、解体時のそれぞれで省CO2を実現し、さらに太陽光発電などを利用した再生エネルギーの創出により、住宅のライフサイクル全体でCO2収支をマイナスにする住宅。
住友林業のLCCM住宅は、木造による原料調達から建設までのCO2排出量が少ないだけでなく、再生可能なバイオマス燃料を乾燥工程に活用した国産材を構造躯体に採用することで、より多くのCO2を削減する。また、独自のBF(ビッグフレーム)構法で、将来の間取り変更にも柔軟に対応可能で、建設、改修、解体のトータルでCO2排出量を抑え、太陽光発電による再生エネルギー活用と光と熱をコントロールして、LCCMを実現している。強固な構造躯体は、在来工法に比べ2割ほど多くの炭素を固定し、長期に炭素を固定し続け、脱炭素社会に貢献する。
BF構法は、日本初を謳う木質梁(はり)勝ちラーメン構造として、優れた耐震性と耐久性を発揮するオリジナル構法。幅560ミリのビッグコラム(大断面集成柱)と金物相互を直接接合(メタルタッチ)するジョイント金物で、構造躯体を強靭化。モデルプラン(BF構法、2階建て、延べ床面積114.18平方メートル)で試算した炭素固定量(CO2換算量)はCO2換算で1棟あたり、約18t-CO2となり、約0.3ヘクタールの杉林が50年間に吸収するCO2量に相当するという。住友林業の戸建て注文住宅の年間販売棟数で算出すると、約2600ヘクタール分相当となり、使用した木材分を再植林することで、森林を若返らせC02吸収量を増やすことにつながる。
BF構法は構造部分(スケルトン)と暮らしに合わせて配置する内装・設備部分(インフィル)を分け、スケルトン・インフィルの考え方に基づいた設計を可能にする。「Si間仕切り」は、通常の仕切り壁と比較して、取りはずしが容易で、家族のライフスタイル変化に合わせて間取りを変更できるため、後世へと引き継ぐ家として長期間炭素を固定し続ける。
光と熱をコントロールするパッシブデザインでは、南の採光面は「日射取得型複層ガラス」、ほかの面には「日射遮蔽型真空トリプルガラス」を導入。深い庇などは夏の強い日差しをカットし、冬は光を効果的に室内に取り込む。建物は高性能な断熱部材で全体を包む「360度トリプル断熱」とし、光と熱をコントロールして過ごしやすい居住空間と、CO2排出量の削減を両立する。
環境配慮機器では、屋根形状を工夫することで、大容量の太陽光発電システムを搭載。省エネルギーでお湯を沸かす高効率給湯器も採り入れることで、太陽光発電のクリーンエネルギーと併せて環境に配慮しつつ光熱費を削減。
建物の構造となるビッグコラムと軸柱には国産ヒノキの集成材、梁は国産カラマツ集成材を設定。さらに、柱、梁といった主要構造部材の乾燥工程では、再生可能なバイオマス燃料を活用し、建設段階のCO2排出量を抑える。
LCCM住宅の発売日は2022年4月22日で、販売エリアは断熱地域区1〜3地域と沖縄を除く全国。価格は3.3平方メートルあたり103万円(税込み)。受注目標棟数は、年間100棟を掲げる。
住友林業は、SDGsの目標年である2030年を見据え、脱炭素社会に向けてあるべき姿を事業構想に組み込んだ長期ビジョン「Mission TREEING 2030」を発表。建築部門では脱炭素設計のスタンダード化を進め、国内外で森林経営から木材建材の調達・製造、木造建築、木質バイオマス発電まで「木」を軸とした事業を展開している。木を伐採・加工、利用、再利用、植林という住友林業の「ウッドサイクル」を回すことで、森林のCO2吸収量を増やし、木材の活用で炭素を長く固定することを目指す。
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