高度化した小径用自動削孔装置を実工事に適用、奥村組:施工
奥村組は、既存RC構造物の補強工事に使用される「あと施工アンカーを用いた壁などの増設工法」で、削孔作業の省力化と効率化を図るために開発した「小径用自動削孔装置」を一部改良した上で実工事に初適用した。今後は、新装置を、既存RC構造物における補強工事の効率を一層向上させる技術として提案していく。加えて、アンカー削孔作業以外でも、建設現場の機械化・自動化に継続して取り組み、生産性の向上を図る。
奥村組は、既存RC構造物の補強工事に使用される「あと施工アンカーを用いた壁などの増設工法」で、削孔作業の省力化と効率化を図るために開発した「小径用自動削孔装置※1」を、一部改良した上で実工事に初適用し、所定の性能を有することを確認したことを2022年3月29日に発表した。
※1 小径用自動削孔装置:小径用自動削孔装置は、削孔径が小さく深さが浅い「あと施工アンカー挿入孔(最大削孔径は約φ25ミリ)を対象とするもの。
作業の省力化と効率化を実現することが判明
これまでの小径用自動削孔装置は、使用する電動ハンマードリルが、削孔方向に300ミリ、上下方向に1500ミリの範囲で自動移動するが、左右方向については、底面にキャスターを付け、人力で移動させなければならなかった。
そこで、奥村組は、小径用自動削孔装置に走行用モーターを搭載し、あらかじめ床に設置したレールのラックギアに沿って自走できるように改良した。これにより、削孔計画(削孔位置、削孔深さ、削孔数)に従って、削孔位置への移動から削孔までの一連の削孔作業を全て自動化させた。
既に、同社では、東京都下水道局発注の水再生センター放流渠耐震補強工事(東京都八王子市)で、今回の装置を適用した。具体的には、放流渠(ボックスカルバート)20メートル区間の隔壁と側壁を対象に、削孔径φ16ミリ、φ25ミリのアンカー挿入孔を、事前に設定した削孔計画に従い2日間で約400カ所(各径 約200カ所)を自動削孔するとともに、合わせて施工データの記録も自動で行った。
また、事前の鉄筋探査で把握しきれなかった鉄筋に接触した際は、制御機能が働き、自動的に削孔を中止し、次の孔へ移動して削孔を継続することも確かめた。さらに、20メートル区間を区切って性能を検証しながら施工した結果、実工事でも新装置が作業の省力化と効率化を実現することや削孔計画に求められる施工精度を確保する性能を有することも判明した。
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