既存RC構造物の挿入孔の削孔を自動化する新装置、削孔精度は人力施工と同等を確保:製品動向
奥村組は、RC構造物の補強に用いる「後施工せん断補強工法」と「後施工アンカーを用いた壁などの増設工法」の削孔作業を自動化する新装置を開発した。今後、新装置は、「ベストグラウトバーによる後施工せん断補強工法」のせん断補強鉄筋「ベストグラウトバー」を埋め込むための挿入孔を削孔する業務にも適用していく。
奥村組は、既存RC構造物の補強工事に適用する「後施工せん断補強工法」と「後施工アンカーを用いた壁などの増設工法」で削孔(さっこう)作業の省力化や効率化を図るため、自動削孔装置を開発した。
自動削孔装置は大径用と小径用の2種類を用意
両工法は、せん断補強鉄筋やアンカーを既存RC構造物に埋め込むための挿入孔を削孔する。挿入孔は通常、削岩機や電動ハンマードリルなどを用いて人力で削孔するが、削孔数が数千カ所に及ぶ場合は、多大な労力を要するため、作業の省力化と効率化が求められていた。
そこで、奥村組は削孔作業を自動化する自動削孔装置を開発した。自動削孔装置は大径用と小径用の2種類を用意している。大径用は、後施工せん断補強工法におけるせん断補強鉄筋の挿入孔を対象にしており、最大削孔径はφ40ミリ程度。空圧削岩機を用いた自動削孔装置で、削岩機を削孔方向に最大1200ミリスライドでき、上下方向のストロークで1750ミリ、左右方向のストロークで500ミリのエリア内で移動が行える。
小径用は、後施工アンカーを用いた壁などの増設工法における削孔径が小さく深さも浅い後施工アンカー挿入孔を対象とし、最大削孔径はφ25ミリ程度。電動ハンマードリルを用いた自動削孔装置で、電動ハンマードリルを削孔方向に最大300ミリスライドでき、上下方向で1500ミリのスペース内で移動が可能。
両装置とも、削孔の位置や深さ、数を入力した削孔計画に従って可動範囲内を自動で削孔し、削孔の位置や深さ、数、時間などの施工結果データも自動的に記録する。削孔計画と削孔結果は、両装置の制御盤から無線LANで指定のPCに送れる。
自動削孔中に削孔ビットが既存RC構造物内の鉄筋などに接触した場合は、削孔速度の変化による自動判定で、削孔を中止し、次の孔を削孔するため、既存鉄筋への損傷を極力抑えられる。また、削孔を中止した部分は、自動削孔が終了した後に削孔位置の再検討を行う。削孔中に生じる粉じんは、集じん機と集じんカバーで、飛散を防ぐ。
奥村組は、両装置の性能を確かめるために、RC壁試験体を使用して実験を行った。結果、削孔の位置や深さは人力施工と同等の精度を確保し、作業の労力軽減や作業時間の短縮が図れることが判明した。
今後は、後施工せん断補強工法と同様に、せん断補強鉄筋を埋め込む挿入孔を削孔する「後施工六角ナット定着型せん断補強鉄筋 ベストグラウトバー」に大径用の新装置を適用することを検討している。
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