CO2排出ゼロを可能にする次世代圧入機「ジャイロパイラーGRV0611e」をオランダ世界遺産PJで導入、技研製作所:導入事例
技研製作所は、電動の鋼管杭回転切削圧入機「GRV0611e」と電動化させた「GRBシステム」を開発し、2022年1月にオランダの現場に適用した。
技研製作所は、施工時のCO2排出ゼロを可能にする電動の鋼管杭回転切削圧入機(ジャイロパイラー)「GRV0611e」と電動システム「GRBシステム」機器を開発した。脱炭素化を見据えて初めて完全電動化した新型機は、排ガスを出さない次世代の施工機械と圧入システムで、従来機に比べて施工能率も飛躍的に向上している。
排ガスを出さない次世代の圧入システム
新型機はオランダの世界遺産プロジェクトに向け、2021年12月3日に出荷され、2022年1月から実証施工を開始した。世界の中でも環境規制の厳しいEUで、世界的に注目度の高い一大プロジェクトをけん引する中で、SDGsにも貢献する圧入システムをアピールするのが狙い。
今後は、さらに新型機を軽量・コンパクト、高効率に進化させることで、各量産機種への水平展開を図る。「無振動・無騒音」「省スペース施工」「仮設レス施工」といった圧入原理の優位性に加え、「施工時のCO2排出ゼロ」を新たな強みとし、圧入システムや「インプラント工法」の普及をグローバルで加速させていくとしている。
技研製作所は、施工時のCO2排出ゼロを世界中で実現することを見据え、バッテリーで稼働する圧入システムの開発も進めており、GRV0611eは、従来機が化石燃料でエンジンを回して油圧ポンプを駆動していたところ、電動モーターを採用。電動モーターで油圧ポンプを駆動して機械の油圧動力を得る。現場によっては送電網より電気を引くことが可能なため、電力調達を含めて排ガスをゼロにできる。
また、圧入杭をつかむチャックの回転モーターを電動式にすることで、施工能率が飛躍的に向上した。ジャイロパイラーは、先端に切削爪を付けた鋼管杭を回転させ、硬質地盤やコンクリートなどの地中障害物を貫いて圧入する。油圧式の従来機(新型機と同じく直径500ミリ、600ミリ鋼管杭対応)の回転数が1分間に最大6.8回だったのに対し、電動式となった新型機は最大23回と3倍以上もアップ。さらに、従来機は回転トルクの上昇に伴い回転数が落ちてしまうのに対し、電動式では回転数を維持したまま圧入できるようになった。
電動式ユニットの部品点数は、エンジン式ユニットに比べ、3分の1で済むので、機械が軽量化・コンパクト化された。生産コストに加え、エンジンのメンテナンスに必要なオイルやフィルターなどのコストを抑えることにもつながる。部品点数が減った分、部品の製造や廃棄で生じるCO2などの環境負荷も低減する。
電動「GRBシステム」の基本構成は、圧入杭を地中に押し込む圧入機本体を先頭に、杭を建て込む「クランプクレーン」、油圧動力源である「パワーユニット」とそれを移動させる「ユニットランナー」、発進基地(施工起点)から杭を搬送する「パイルランナー」から成る。電動化させたシステムは、発進基地の送電網や発電機からケーブルでパワーユニットに電力を供給する。
技研製作所では、これまでにも、作業用仮設工事を不要とする「GRBシステム」で施工工数の削減を実現し、建設分野でのCO2削減に寄与しており、今回の電動圧入システムの実現で、より一層の脱炭素化に貢献できるようになるとしている。
将来的に電動圧入システムが普及し、エンジン式からの置換が進めば、排ガス規制が強化されるたびに対応機種を開発するコストが不要となる。そのため、技研製作所では、「今後も環境負荷を低減する機械の開発や普及にスピード感を持って取り組み、脱炭素社会の一刻も早い実現を目指す」としている。
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