超低空頭専用の圧入機2機種を技研製作所が発売、橋梁下でも効率的な下部工などが可能に:製品動向
技研製作所は、頭上空間に制限のある現場を対象に、杭圧入機クリアパイラーの新機種を発売した。ニューモデルは、500/600ミリのU形鋼矢板に対応した「CLW100」と、鋼管矢板で施工する「CLP200A」の2機種。
技研製作所は2021年3月、橋梁(きょうりょう)のけた下などといった頭上空間に制限がある空頭制限下で、施工効率を高める超低空頭専用の新型杭圧入引抜機「CLW100」と「CLP200A」の販売を開始した。
600ミリ幅のU形鋼矢板に対応した「CLW100」
CLW100は、旧モデルで施工可能だった500ミリ幅のU形鋼矢板に加え、600ミリ幅のU形鋼矢板にも対応。圧入する杭をつかむ「チャック」の構造を改良し、空頭制限下で短い杭を溶接などで継ぎながら施工する「継施工」で、従来機よりも長い鋼矢板を建て込めるようになった。
CLP200Aは、直径800、900、1000ミリの鋼管矢板に応じ、新たにコーナー施工を可能とした他、チャック機構の改良や各種自動化技術によって施工の効率化を実現した。
新型のクリアパイラーを使えば、クリアランスの低い橋下の工事でも、橋げたの撤去や迂回道路の設置が不要となり、周辺交通に影響を与えず、容易に橋梁下部工や基礎工の補強が可能となる。
構造物の長寿命化や国土強靭化が進められるなか、老朽化した橋梁の耐震補強工事や橋の下での河川護岸改修といった空頭制限下の工事は増加することが予想される。そのため、技研製作所では、空頭制限下での施工効率を高め、工費と工期を縮減できるCLW100、CLP200Aの販売拡大に期待を寄せている。
各機種の特徴をみると、CLW100は、旧モデルが400ミリもしくは500ミリ幅のU形鋼矢板にしか対応していなかったが、新型機は500ミリに加え、600ミリの鋼矢板でも施工可能となった。1枚当たりの施工幅が広がることで、工期短縮やコストカットにつながる。
また、旧モデルは、鋼矢板をチャック上部から投入する必要があり、空頭制限下で建て込める鋼矢板を短くしなければならなかった。その点、新型機は、チャック前部が開くように改良し、鋼矢板を前方から建て込めるようになった。上部吊(つ)り上げが不要となった分、従来機よりも投入する矢板長を長くでき、継施工の溶接作業の大幅な効率化が図れ、全体工期が短くなる。
操作面では、オペレータの習熟度で、操作時間に差が出る自走の基本動作(クランプ開〜本体上昇〜サドル前進〜クランプ左右入れ替え)がボタンを一押しするだけで行える。
本体の重さは8790キロと、剛性を維持しつつ各部品を最適化することで、旧モデルのCLF120(9650キロ)と比べて、1トン近く軽量化している。
コーナー施工が可能になった「CLP200A」
一方、大型のCLP200Aは、チャックの回転機構を変更し、回転範囲を拡大することで、両隣の杭の継手をはめ合わせるコーナー施工が可能となった。
チャックの前開き機構は、鋼管矢板対応の旧モデル(CLP200)にも搭載されていたが、新型機ではCLW100も同様に、「チャックの開閉」〜「(開口部が開かないようにする)ロックピンの抜き差し」がボタン1つで完了し、作業性が改善された。
CLP200Aのホームポジション自動復帰機能では、機体の搬送時には3分割し、基本姿勢(ホームポジション)に戻すが、基本姿勢への自動復帰はボタン操作だけで済み、現場の負担が軽減される。
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