東急建設が建築資材のCO2排出量を算定するツールを開発:カーボンニュートラル
東急建設は、積み上げ式による建築資材のCO2排出量算定ツールを開発した。開発したツールによって、見積もり時に精度の高いCO2排出量を把握し、低炭素型資材の採用などが促され、建築工事のサプライチェーン全体でCO2削減量を可視化し、低炭素型資材の採用などが促進されると期待を寄せている。
東急建設は2022年2月3日、サプライチェーンで多くを占める建築資材に関わるCO2排出量について、これまでよりも精度が高く、かつ即時に算出できる独自のツール「積み上げ式CO2排出量算定シート」を開発したと発表した。今後、受注する新築の建築工事を対象に、顧客の要望に応じて算定結果を提供していくという。
Scope3のカテゴリー1「購入・取得した資材」のCO2排出量が把握可能に
積み上げ式CO2排出量算定シートは、これまで難しいとされていた資材を積み上げて算定する方法を採用し、使用する資材ごとの排出量を高い精度で把握することが可能になる。また、従来の工事金額から算定する方法では難しいとされていた低炭素型資材を用いたCO2排出量削減などの効果を反映することも実現する。
建設資材のCO2排出量の把握には、工事金額から算定する方法と資材を積み上げて算定する方法の2種類がある。一般的な工事金額から算定する方法は、工事金額に排出量原単位を乗じて、CO2排出量を算定する方法で、工事全体が一式で算定されるため、低炭素型資材の活用など、各工事の排出量削減の取り組みが反映されないのが課題だった。
一方で、資材を積み上げて算定する方法は、資材ごとに排出量を算定して積み上げるため、排出量削減の取り組みを反映できるが、資材の種類が膨大に及ぶ建設工事では、積み上げることが煩雑となり、建設に関わる資材ごとの原単位が明確に定められていない。そのため、資材を積み上げて算定する方法で建物のCO2排出量を算定するのは困難とされていた。
こうした資材を積み上げて算定する方法の問題を解決するために、東急建設では独自ルールを設定し、積み上げ式CO2排出量算定シートを開発。資材の種類が膨大なことに対しては、90%以上の物量をカバーできるように重量割合の大きい資材をピックアップし、算定する資材を厳選。また、資材固有の原単位は、公的に開示されているデータの他、資材メーカーなどへのヒアリングにより補充し、独自のデータベースを策定した。
近年、サプライチェーンを含むCO2排出への対応の重要性が高まっている。サプライチェーンの排出量は、世界的な基準やガイドラインであるGHGプロトコルのScope3に定められており、自社の直接排出量(Scope1)やエネルギー利用による間接排出量(Scope2)を除いた「その他の間接排出量」を指し、Scope3には、原材料や輸送・配送の排出量(上流)、消費者による製品の使用や廃棄(下流)までが含まれている。
建設業におけるScope3のなかでも、カテゴリー1として分類される「購入・取得した資材」の排出量は高い割合を占めているにもかかわらず、膨大な種類の資材使用量などの把握が煩雑なため、積み上げ式による排出量算定はハードルの高いとされていた。工事を発注する事業者は、建設に関わるCO2排出量が自社事業にカウントされるため、将来的なカーボンニュートラルを標ぼうしている企業を中心に、精度の高いCO2排出量算定が求められていた。
東急建設では、これまで計測してきたScope1、2に加え、今回、Scope3カテゴリー1の算定が可能となったことで、建築工事の着工から竣工までに発生する全てのCO2排出量を顧客に掲示できるようになった。加えて、今回開発したツールでは、事前に精度の高いCO2排出量が分かるために、より低炭素資材の採用などにつながり、CO2削減に寄与するとしている。
今後は、建築での脱炭素の動向を踏まえつつ、発注者の要望に合わせ、積み上げ式CO2排出量算定シートのカテゴリー拡大と精度向上を図っていく。
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