大成建設らの事業がNEDOのプロジェクトで採択、炭酸塩利用技術開発に着手:産業動向
大成建設と住友大阪セメントは、NEDOが展開する「グリーンイノベーション基金・CO2を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクト」の「CO2回収型セメント製造プロセスの開発」における「多様なカルシウム源を用いた炭酸塩化技術の確立」のうち「炭酸塩利用技術開発」に事業を応募し採択された。今後、両社は、採択された事業の技術開発を2022年度から進め、カーボンリサイクルセメントおよびカーボンリサイクル・コンクリートに関わる技術の確立とその社会実装を目指す。事業期間は2021〜2030年度の見通しだ。
大成建設と住友大阪セメントは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業に応募し、採択されたことを2022年1月28日に発表した。
最適なCaO抽出・CO2固定化技術を確立
今回の事業は、「グリーンイノベーション基金・CO2を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクト」の「CO2回収型セメント製造プロセスの開発」における「多様なカルシウム源を用いた炭酸塩化技術の確立」のうち「炭酸塩利用技術開発」で採択された。
内容は、生成した炭酸塩がカーボンリサイクルセメントの焼成原料あるいはセメント成分となる増量材などとして利用可能かを検証し、そのコンクリートとしての性能(強度など)を満たす材料開発を行うとともに、設計・施工に関わるガイドラインの作成となる。
具体的には、セメント(主成分CaO)は天然石灰石(CaCO3)の脱炭酸(CO2分離)反応により工業生産されているが、採択された事業では、廃コンクリートや一般焼却灰といったCaを含有する多様な廃棄物などからCaOを抽出し、セメント生産工程で分離されたCO2と再結合させ、人工石灰石(CaCO3)を生成(炭酸塩化)し、人口石灰石を原料としたカーボンリサイクルセメント※1(CRC)を製造することで、セメント産業でのカーボンニュートラルを目指す。
※1 カーボンリサイクルセメント:現行のセメント原料である天然石灰石の代替となる炭酸塩となる人工石灰石をCO2のリサイクルにより原料として製造するセメント。人工石灰石はセメント原料(焼成原料)として利用する以外にも、増量材や他産業向け充填材として利用も可能。
さらに、間接あるいは直接に炭酸塩化する「IDC方式」と「DC方式」※2により多様なCa含有廃棄物に適した複数の炭酸塩化技術を開発・検証し、最適なCaO抽出・CO2固定化技術の確立を図る。なお、IDC方式は、住友大阪セメントや山口大学、九州大学、東京工業大学が担当し、DC方式は三菱マテリアルと東京大学が担う。
※2 「IDC方式」と「DC方式」:間接(IDC)方式と直接(DC)方式によるCaO抽出・CO2固定化を指す。IDC方式はバイポーラ膜電気透析を利用し、Caを高効率に抽出して、高品質な炭酸塩を回収・製造することが可能な方式による炭酸塩製造。DC方式は廃棄物の前処理などでCO2を大量に直接吸収させ、安価に処理可能な方式による炭酸塩製造。なお、バイポーラ膜電気透析(BMED)はイオン交換膜によりイオンをこし分ける技術で、廃棄物からCaOを抽出するための「酸(塩酸)」と、排出ガス中CO2を吸収する「アルカリ(水酸化ナトリウムや水酸化カリウム)」を同時生成できる
加えて、生成した炭酸塩がカーボンリサイクルセメントの焼成原料あるいはセメント成分となる増量材などとして利用可能かを検証し、そのコンクリートとしての性能(強度など)を満たす材料開発を行うとともに、設計・施工に関わるガイドラインの作成を行い、社会実装を目指す。
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