CO2削減に貢献する新開発のコンクリートを自社施設の施工に国内初適用
前田建設工業は、圧送による現場打ち「ジオポリマー」による打ち込みを国内で初適用。茨城県取手市で建設している同社の「新技術研究所総合実験棟」で機械架台の一部に圧送して打込みを行ったという。
前田建設工業は、未利用資源を利活用した新開発のコンクリート「ジオポリマー」を用いて、ポンプ圧送による現場打ち施工を国内で初めて行った。竹本油脂の協力の下、茨城県取手市で建設を進めている「新技術研究所総合実験棟」で、機械架台の一部に導入。建設現場内にジオポリマー製造用プラントを設置し、製造ヤードから施工箇所までの区間を圧送して打込みを行った。
セメントを一切使用せず、80%のCO2排出量を削減
ジオポリマーは、石炭の火力発電所から排出される石炭灰や製鉄所から排出される高炉スラグ微粉末などの“産業副産物”を大量に使い、セメントを一切使用しないため、一般的なコンクリートと比較してCO2排出量を80%削減し、環境負荷の低減につながることが期待されている。
高い粘性を持つジオポリマーは、養生条件をコントロールすることで、短時間で高い強度を得ることができ、耐薬品性にも優れるコンクリートの代替材料。その一方で、産業副産物を大量に用いるため、材料の品質変動への対応や製造段階でのフレッシュ性状状態を維持するために、高度な技術と豊富な経験が求められていた。
前田建設工業では、独自の配合設計を生み出し、ジオポリマー専用の混和剤を用いることで、課題を解決。ポンプ施工による大幅な運搬(打込み)の効率化を実現した。
2016年度に実施した実物大の施工実験では、現場打ちジオポリマーの加温養生による高品質化・高耐久化について確認した。適用箇所に要求される品質に応じたジオポリマーの配合設計と製造・施工を可能にしたという。
今後は、産業副産物(石炭灰、スラグ)の排出事業者へ新たな資源サイクルとしての技術提案やイオン交換を生かした機能性材料として、放射性廃棄物の埋設事業や放射性汚染土などの処分事業を所管する自治体へ積極的に提案して、新たな市場開拓を目指す。
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