大成建設、CO2収支をマイナスにするカーボンリサイクルなコンクリ開発:施工
大成建設は、コンクリート製造過程で排出されるCO2を回収・再利用して製造した炭酸カルシウムを用いてコンクリート内部にCO2を固定し、CO2収支をマイナスにするカーボンリサイクル・コンクリート「T-eConcrete/Carbon-Recycle」を開発した。耐久性、強度、施工性も兼ね備えている。
大成建設は、コンクリート内部にCO2を固定しCO2収支をマイナスにするカーボンリサイクル・コンクリート「T-eConcrete/Carbon-Recycle」を開発した。
同社はこれまでも、一般的なコンクリートに比べCO2排出量を最大80%削減する、環境配慮コンクリート「T-eConcrete」の開発でCO2排出量の削減に努めてきたが、カーボンリサイクルにあたってはコンクリートの耐久性、強度、施工性に課題があった。
今回のカーボンリサイクル・コンクリートでは、T-eConcreteの製造過程で排出されるCO2を回収し、これを再利用して製造する炭酸カルシウムを用いて製鋼副産物である高炉スラグ主体の結合材によりコンクリートを固化させることで内部にCO2を固定し、カーボンリサイクルを可能にした。
同コンクリートは、炭酸カルシウムを介して、コンクリート内部に1m3当たり70〜170kgのCO2を固定でき、固定する効率はCO2を地中貯留する技術CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)に匹敵するという。このように、コンクリート材料内部へのCO2固定と高炉スラグの使用により、製造過程におけるCO2収支を−55kg/m3〜−5kg/m3にした。普通コンクリートのCO2排出量は250〜330kg/m3とされる。
回収したCO2は、製造時、直接コンクリートに吸収させないため、コンクリートが中和せず、強アルカリ性を保持してコンクリート内部の鉄筋の腐食を防ぐ。これにより、鉄筋コンクリート構造物の耐久性を維持する。
さらに、特殊な設備を使用せず、生コン工場の通常設備での製造を可能とし、圧縮強度が20〜45N/mm2、流動性がスランプ15cm、スランプフロー60cmと普通コンクリートと同等の強度、施工性も実現した。
今後、同社は「T-eConcrete/Carbon-Recycle」を現場打ちコンクリートや二次製品など多様な建設資材に取り入れ、「T-eConcrete研究会」とも連携してさらなる技術開発を進めていくという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 大成建設が室内への花粉やPM2.5の侵入を防ぐ浄化装置を開発
大成建設は、風除室に設置することで、衣服や頭髪に付着した花粉やPM2.5などを素早く除去し、マンションやオフィスの居住・執務空間への持ち込みを軽減して、室内環境の向上を実現する浄化装置「T-Clean Air」を開発した。今後、快適で健康的な空間を構築するアイテムとして、マンションをはじめ、オフィス、病院、介護老人保健施設などの新築工事とリニューアル工事にT-Clean Airを提案していく。 - 大成建設と横国大が連携強化のため「クロスアポイントメント制度」を活用
大成建設と横浜国立大学は、産学連携を強化するため、クロスアポイントメント制度を活用することで合意した。同制度では、横浜国立大学の教員が大成建設の「技術アドバイザー」として招聘され、共同研究と人材育成の両面で互いに協力していくことになる。 - 大成建設が希少動植物の保全計画立案を効率化するツールを開発
大成建設は、水辺に生息する希少動植物の保全を支援するツール「水辺コンシェルジュ」を開発した。水辺コンシェルジュは、タブレット端末を介して、保全計画策定に必要な情報を分かりやすく表示し、関係者とのスムーズな合意形成と情報共有を実現して、希少動植物が生息できる適切な候補地の選定といった保全計画の立案を後押しする。 - 大成建設がダム建設現場周辺の生物の生息状況を見える化する手法を開発
大成建設は2018年6月18日〜11月19日、魚道が設置されたダム建設現場周辺の河川で、生物由来のDNA分析技術を用いて、川を遡上するサクラマスの調査を計12回実施し、DNA分析技術を用いたリサーチ手法の効果を分析した。