建物内のセンサーをワイヤレス化するマイクロ波ワイヤレス給電システム、大成建設:スマートシティー
大成建設は、三菱電機と共同で、マイクロ波を用いたワイヤレス給電システム「T-iPower Beam」を開発した。T-iPower Beamは、スマートシティーとZEBで求められるセンサーや建物内設備のワイヤレス化、バッテリーレス化を実現し、配線と設備のスペース確保、バッテリー交換作業を不要とすることで、センサーの導入と取り付けを効率化する。
大成建設は、三菱電機と共同で、マイクロ波を用いたワイヤレス給電システム「T-iPower Beam」を開発し、実証実験を開始したことを2022年1月11日に発表した。
最大25ワットの電力を送信可能
昨今、国内では、スマートシティーなどの実現に向けて、建物内に各種センサーやモバイル機器を設置する動きが増えている。
上記の設備は、建物内の温度や湿度といった環境情報、建物利用者の人流計測が行える他、空調・照明機器や警備・サービスに携わる自動ロボットなどの制御に用いられており、スマートシティーやZEBには不可欠なものとされている。
さらに、スマートシティーとZEBでは、センサーやモバイル機器を大量に取り付ける必要があるため、電源・通信設備の配線と設備スペースの確保、バッテリー充電、交換などの作業が必須となり、それらのメンテンナンスにかかる作業やコストが課題とされていた。
そこで、大成建設は三菱電機と共同で、建物内で稼働する自動ロボットからマイクロ波を発して、最大25ワットの電力を送信し、センサーやモバイル機器などにワイヤレスで給電することが可能となるシステムのT-iPower Beamを開発した。
T-iPower Beamは、自動ロボットに搭載した小型送電装置からマイクロ波を用いて、ワイヤレスで建材一体型受電装置に給電され、そこからセンサーとモバイル機器へ電力を供給する。これにより、センサーとモバイル機器のワイヤレス、バッテリーレス化が可能となる。
具体的には、マイクロ波による給電の課題は、送電時にマイクロ波が拡散してしまうことで、効率良く受電できないことだったが、解決策として、指向性の高いビームを形成できる5.7GHz帯を使用し、ビームを制御すうマイクロ波ワイヤレス送電装置を利用して、受電装置以外の場所への電波拡散を低減し、建物内外への影響を抑制して給電する。
加えて、マイクロ波ワイヤレス送電装置から送られる電波の拡散を抑制するために、建材とマイクロ波ワイヤレス受電装置には、バッテリーを一体化した建築内装材を活用し、電波の漏えいを防ぎ、建物内外への影響を抑える。
T-iPower Beamの実証実験は、2021年12月〜2022年2月に、大成建設が神奈川県横浜市戸塚区で保有する技術センター「人と空間のラボ(ZEB実証棟)」で行っている。実験の内容は、マイクロ波ワイヤレス送電装置から電波を放射し、建物内外の電波強度分布測定により、建物内における周辺機器への影響の可能性や建物外への電波漏えい状況を確認。
また、電波吸収体と受電装置と一体化した建築内装材を天井面に設置した状況でシミュレーションを行い、建物内外での電波強度の削減状況をチェックしている。
今後、大成建設は、三菱電機と協力し、送電電力量をさらに増強したマイクロ波ワイヤレス送電装置を複数台の移動式サービスロボットなどに搭載し、建物内でのさまざまな用途に対して、マイクロ波ワイヤレス給電を実施した場合の運用効果や安全性の実証を進め、社会実装に向けて取り組んでいく。
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