3DCADと連動し概算総水量と経時流量変化量を算定、洪水時の流量観測を実現する長期無給電の計測システム:i-Construction推進コンソーシアム「技術開発・導入WG」(下)(1/3 ページ)
国土交通省関東地方整備局が管轄する事業所では、河川の洪水時に流量を計測できるシステムや河床を測れる機器が望まれている。こういったニーズに対して、民間企業は、自律発電型水位測定装置や長期無給電の流量計測システム、水位と堆砂量を計測するセンサーの提案を進めている。
国土交通省関東地方整備局(関東地整)主催の2019年度第1回マッチングイベント「i-Construction推進コンソーシアム『技術開発・導入WG』」が2019年7月9日、さいたま新都心合同庁舎2号館で開催された。イベント後半では、品木ダム水質管理所、甲府河川国道事務所がニーズを、日本の農林資源開発、川田テクノシステム、拓和がシーズを紹介した。
導電センサーで水位を測定
品木ダム水質管理所 管理所長の風間聡氏は、電源を必要としないダムへの流入量観測機器のニーズを説明した。
現在、品木ダム上流河川で洪水時の流量観測ができていないため、水位上昇に迅速に対応することに苦労しているという。河川上流部は急峻な地形のため商用電源の確保は困難な状況にある。
風間氏は、「現在、品木ダムがある湯川に合流する大沢川や谷沢川の中和剤投入口に、監視カメラシステムであるCCTV(Closed Circuit Television)を設けているため、このシステムで撮影した映像から流量を推定できるソリューションを望んでいる。CCTVは夜間の撮影に対応しておらず、その点も留意してほしい。10分ごとに測定し、リアルタイムにデータを事務所へ送れるシステムを条件とする。CCTV用のケーブルは取り付けられたが、電源の設置やケーブルの増設は難しい。現場試行の場所は大沢川と谷沢川の中和剤投入口で、積雪期間は入山が簡単でないため、時期は2020年5月から11月まで。規模は、両河川とも1箇所で、進入路は狭い。酸性河川であるため、川に機器を置く場合は対策が必要だ」と語った。
このニーズに対して、日本農林資源開発と川田テクノシステムがシーズを提案した。農業と林業向けのコンサルタントビジネスを展開する日本農林資源開発 代表取締役社長の中村一氏は「自律発電型水位測定装置」を披露した。
この装置は、水位に応じて導電センサーが起動することで計測するもの。状態を緑・黄・赤色でLED表示し視認性が高く、搭載された水車と風車で発電・充電も可能。Wi-Fiを通じて、日時と日付を記載したデータを送れるため、水位の時系列変化を捉えられる。
中村氏は、「ダムの取水口で水位を測る方法として、増水時に目視確認は危険だ。豪雨時などの視界が悪くなった際には、CCTVだと状況の把握が厳しい。水圧を検知する高精度な水位計は、水の密度が変化するケースでは正確な値を出しにくいといった問題がある。自律発電型水位測定装置は、こういった課題を解消している。装置の左右のへこみ部分に導電センサーを装着し、水の有無による導電率の変化を32ビットマイコンで検出すると、LEDが点灯する。センサーとLEDの数量やその間隔をセンチ単位で調整することもできる。Wi-Fiを通じて送れる情報を時系列に表示すると、増水、減水の状態が事務所内のPCで確かめられる。現場導入する上では、設置位置や取り付け方法について考えていかなければならない」と述べた。
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