森ビルが都市全体の震災リスクを見える化、加速度センサーとLPWAで地盤と建物を格付け:BCP
森ビルは、省電力かつ長距離通信のLPWA通信と加速度センサーを組み合わせ、ビルに設置して地震が起きた際の揺れを計測することで、土地と建物の震災リスクを格付けするシステムを開発した。
森ビルは2022年1月17日、建築研究所の委託事業「革新的社会資本整備研究開発推進事業(BRAIN)」※の一環で、最新のIoTによる「土地建物格付けシステム」を独自開発したことを明らかにした。今後は、BRAINの共同受託者の小堀鐸二研究所とともに早期にシステムを社会実装し、事業化を目指していく。
※「革新的社会資本整備研究開発推進事業(BRAIN)」:建築研究所が建築・住宅・都市分野の国土強靭化や生産性向上に資する革新的技術の事業化に向けた研究開発を推進することを目的とした委託研究制度
都市全体の震災リスクを見える化
土地建物格付けシステムは、多数の地盤と建物に設置されたローパワーネットワークセンサーを通じて震災発生時の揺れに関する観測データを収集し、建物の揺れ性能を分析して格付けすることで、都市全体の震災リスクを見える化と定量化することが可能になる。
システム用に開発された地震センサーは、乾電池だけで1年以上の駆動が可能で、低消費電力かつ長距離通信のLPWA(Low Power Wide Area)に対応した小型の加速度センサー。電気工事も不要で、屋外にも設置できる。
地震センサーをビル屋上や基部、地盤など都市のさまざまな場所に設置することで、地震発生時の地盤と建物を対象に揺れの大きさや周期特性、増幅の程度などを測定し、得られたデータを独自のアルゴリズムで解析。蓄積されるデータを1年ごとにレポートとして、各建物の揺れ性能を定量評価すると同時に格付け(ランキング化)もする。分析結果をもとに、各ビルの所有者や管理者などが適切な震災対策を講じることで、都市全体の震災リスクの低減につながる。
1981年の新耐震基準の施行から約40年が経過するなかで、償却期間の50年経過を見据え、基準を満たす建物についても建て替えの要否が検討され始めている。一方で、それぞれの地盤の条件や建物の老朽化スピードは一律ではないため、どのように各建物のリスクと安全性を正しく評価するかが課題となっている。そこで、森ビルでは、土地建物格付けシステムによって揺れ性能が確認されれば、築年数の経過した建物であっても建て替えなどすることなく継続使用が可能となり、これからの脱炭素社会の実現に向けた社会的要請にも対応するとしている。
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